7時に起きて、シャワーを浴びる。朝食つきプランだったことを思い出し、朝食会場へ。質素なバイキングである。サラダを山盛りよそって、大根の煮物とキンピラ、あとはソーセージを5本盛り付け、知人に写メを送る(知人は急遽宿泊することに決めたので、ホテルが別)。

 知人はここ半年ほど糖質制限ダイエットをやっている。僕はそのことにずっと批判的だった。たしかに知人はずいぶんスッキリしたのだが、最初のうちは一緒に飲みに出かけることも嫌がっていたし、唐揚げばかり食べるようになった。唐揚げは糖質が低めだというのだが、肉や揚げ物ばかり食べていたら腸に良くないだろう。先日、テレビ朝日の番組が「糖質制限の第一人者・桐山秀樹氏」が亡くなったことを受け、「賛否両論・糖質制限ダイエット」という企画が放送されていたときも、その内容を逐一知人に送ってもいた。

 だが、今日から僕も糖質制限をすることに決めた。そう決めたのは、昨日青春18きっぷで電車に揺られているときのことだった。知人は犬特集の『ブルータス』を読んでいたのだが、表4にはあるブランドの広告が掲載されていた。そこに掲載されていたのはバッグの写真だったのだが、ふと気になってそのブランドのサイトを確認してみた。バッグは到底買える値段ではなかったのだが、とても気になるシャツを見つけた。

 ただ、そのシャツはサイズが2つしかなく、今の体型だとピチピチになりそうだ。そのシャツを着れる体になるために、一念発起して糖質制限をすることに決めたのである。ただ、僕には何の知識もないので、知人を先生に定める。朝食の写真を先生に送ると、「きんぴらは△です」とさっそくのご指導をいただく。

 10時、「イノダコーヒ」(三条支店)で知人と待ち合わせる。本店で常連さんだけが座るテーブルの様子を遠巻きに眺めるのも楽しいが、ここの円形カウンター席も素晴らしい。ここはたしかS木さんに教えてもらったのだと思う。本店は朝7時から営業しているが、こちらは10時からだ。今日はミルク入りのホットコーヒーを注文する。

 カウンターの中にはコンロがあり、制服を着た3人の店員さんがコーヒーを淹れ、カップを湯にくぐらせて温め、常連さんにはお決まりの新聞を渡し、トーストにバターを塗る。キビキビ動く店員さんの様子をいつまでも眺めていたいけど、ほぼ満席になってしまったので15分ほどで店を出た。知人はハムサンドも食べていた。

 知人の好きな服屋はまだ営業前なので、コンビニでスタイルフリー(500ml)を買って錦市場を歩き、ヤリイカや鱧の天ぷらを買い食いする。先生から「ちなみに、ヤリイカは△です」と指導が入る。甘めの味付けは糖質が高くなるのだと。午前中はさほど混んでおらず、歩きやすかった。ぶらついているうちに11時になり、御幸町通の服屋を見て歩く。特に買いたいものは見つけられなかった。

 今日はこのあと「スタンド」でハイボールを飲むつもりだが、営業時間は12時からだ。しばらく新京極をぶらついてみたが、12時まではあとしばらくある。リュックが重くて嫌になる――再来週に京都を再訪するときにはもっと荷物の仕分けをしなければ――ので、あと開店10分前だが、店の前で待つことにする。僕たちが並び始めるとすぐに数組列を作った。

 開店数分前に扉が開く。近所の目を避けるみたいにして、小声でそそくさと「もう入ってください」と促される。行列なんて作ったら迷惑だったのかなとも思ったが、「今日は(店員の)人数少ないから、オープンと同時に満席になると捌ききれない」とのこと。日曜日は店員さんがすくないのだろう。それでもすぐに満席になってしまうこともあるそうだが、今日はほどよい客入りで、「ええ日曜日や」と店員さんが笑っている。

 まずはハイボールで乾杯する。先生の指導のもと、オムレツ、牛塩ロース、すじ肉の煮込み(これも味付けが甘いので△とのこと)、鯛酢みそ、たこ天をツマミに酒を飲んだ。テレビでは琵琶湖で開催されるマラソンの中継が始まったが、副音声のように聴こえてくる店員さんの会話が楽しい。「マラソンもたまにはコース変えたらええのにな」「ほんまやな。守山のほうに行くとかな」。マラソン中継の前はニュースをやっていて、物騒な事件が報じられていたのだが、店員さんたちはさらに物騒なことを語り合っていた。

 ハイボールを4杯飲んで店を出た。ふとインスタグラムを開くと、誰だか知らないままフォローし返した人が「スタンド」の写真を載せている。ということは、さっきまで同じ空間にいたわけだ。たまにこういうことが起こるから、インターネットは不思議だ。バス停は人で溢れかえっているので、タクシーで京都駅に出て、鹿児島ハイボールと柿の葉寿司(5個入り)を買って新幹線に乗り込んだ。鹿児島ハイボール、初めて見かけたので買ってみたのだが(デザインは洒落ている)、芋の香りが強く、品川に着くまで飲み干せなかった。

 夜、『R-1ぐらんぷり2016』観る。ここ数年で一番観るのがつらかった。それはネタの内容云々以前に、音が聞き取りづらすぎる。裸でネタを披露する芸人や、声を張り上げる芸人が多かったとはいえ、とにかく音響が酷かった。ハリウッドザコシショウが2本目のネタを披露する直前も現場がバタついていたりと、生放送だから仕方がないとはいえ、今年は粗が目立つ。どうしたのだろう。

 優勝者が決定する頃には放送時間が残りわずかになっていた。バタバタとトロフィーや副賞が手渡されてゆく。そんな中、MCが優勝者のコメントを拾うこともなく、「この人がカレドニア行くの?」(副賞の一つはカレドニア旅行)とコメントして放送が終わってしまったのも最低だと思った。どこに愛情があるのだろう。審査員の関根勤が「ほんと面白かった!」と声を張り上げながら副賞を渡していたのが唯一の救いだった。

 それにしても、決勝進出者の傾向がずいぶん変わったように思う。昔はピン芸の可能性や方法論を突き詰めた人たちが揃っているという印象だったが(「そこでそのフレーズを放り込んでくるか!」「ここでその小ネタを挟むか!」なんて感じで唸らされることが多かったが)、今は全力で火の中に飛び込んでいくタイプの荒削りな芸人が揃っている。その芸人魂は素晴らしいとは思うが、それを競う大会だったのだろうか。

 一番気になったのは、去年もファイナリストに残っていたゆりやんレトリィバァである。彼女のネタはもう、「これは果たしてお笑いのネタなのだろうか?」という不思議なシュールさがある。ポップさもある。目指している面白さもわかる(ある意味では話題になっているオリエンタルラジオ――というよりもRADIO FISH――に近いものがあるかもしれない)。

 ただ、その面白さにたどり着くには、繰り出すフレーズの力がもう一つ弱い気がする。ボケの一言目は、“あえて普通のことを言っている”ということで笑いを取りに行っているのはわかる。ただ、そこにおっかぶせる形で放つ二言目のフレーズはもっと言葉として面白くなければ笑いが大きくならないだろう。その二言目のフレーズがウケるようになれば、新しいタイプの笑いが生まれる予感がする。