9時に起きる。昨日の朝もそうだったけれど、酒を飲んだ翌日は身体がハリガネのようだ。眠っているときもハリガネのように固まったまま眠っているのだろう、身体がバキバキである。しかし昨晩は愉しい酒だった。「鳥好」、焼き鳥はもちろんのこと、モロキューとおしんこの盛りがよく、それをツマミに冷酒を飲んで過ごすのはなんとも夏らしい時間だった。T・Mさんも愉しそうに飲んでいたので嬉しかった。しかし、話したいことはたくさんあるはずなのに、そのすべてを話し尽くすことができないのはなぜだろう。それは時間のせいだけでもない気がする。何か語りたい話はあるはずなのに、どうすればその話にたどり着けるのかわからないことがしばしばある。

 シャワーを浴びて、10時にチェックアウト。昨晩のうちに買っておいた海藻サラダとゆで玉子、ホテルのロビーで食す。自転車をこいで倉敷市中央図書館に行き、『タウン情報おかやま』読む。93年12月号まで確認したところで、今度は他の資料を閲覧する。14時、腹が減ってきたのでコンビニに行き、店の前でサラダチキンを立ち食い。通りの向こうに美観地区が広がっており、今日もかなりの人出。ひとしきり資料を見たのち、山陽新聞の古い記事を探す。瀬戸大橋が開通した頃のものと、僕が調べているドライブインが開業した頃のもの。それを終えると、郷土資料のコーナーをあれこれチェックしてみる。

 この2日間の資料探しで、時代の空気感は掴めてきた。僕が調べているドライブイン、開業の日には新聞に一面広告が出ているのも確認できた。ただ、そのドライブインに出かけた体験談はほとんど見つけることができなかった。小学校の記念誌に遠足の思い出が掲載されていないかとしらみつぶしに探してみたけれど、それも確認できず。さて、どうしたものだろう。いくつか方策を考える。いずれにしてもそこを取り上げるのは来年1月に出る号になる予定なので、それまでにもう一度岡山を訪れよう。

 17時に図書館をあとにして、今日も古本屋さんへ。昨日は黒ラベルを2本もいただいてしまったので、コンビニで黒ラベルを3本買ってゆく。これ、昨日のお礼ですと差し出すより先に、「これ、昨日話した京都の日本酒です」と紙パックのお酒を渡してくれる。そして「ビール、冷えてますよ」と言ってくれて、クラシックラガーをいただく。古本屋さんでそんなことを言うのは間違っているのだろうけれど、ここで飲むビールはやっぱりうまい。30分弱過ごしたのち、もう一度Kさんのお墓を訪れる。新しい花が供えてある。仏具店で買っておいた白檀のお線香を焚く。

 18時に自転車を返却する。メールを確認すると「プロフィール写真をいただけませんか」と連絡がきていたのだが、パソコンの中に自分の写真は見当たらなかった。駅前にある証明写真の機械で写真を撮り、セブンイレブンでスキャンして送信。18時28分発の山陽本線に乗車し、2時間ほどで実家のある町にたどり着く。母が駅までクルマで迎えにきてくれる。父は半分眠りながらカープの中継をラジオで聴いている。隣の棟にある祖母の部屋に顔を出す。帰ってきたよと伝えても、祖母はキョトンとしている。「ともふみよ。帰ってきたけん」と伝えても、「ああ、ともちゃんが帰ってくるん」と言う。

 部屋に戻り、コンビニで買ったネバネバとろーり豆腐を食べていると、母が「あーちゃん(祖母)が『ともふみが帰ってくるって言うとったけど、まだ帰ってこんのか』って言いよるけん、顔を出してあげて」と伝えにくる。さっきの会話は、祖母の中では「知らない誰かが孫の里帰りを知らせにきてくれた」という感覚だったのだろう。もう一度顔を出す。別に悲しいという気持ちはないのだけれど、あまり祖母のことを見れなかった。湯につかりながら、蟲文庫で買った正岡子規『仰臥漫録』を少し読んだ。風呂上がり、梅干しを肴にノンアルコールビールを飲んだ。