朝8時に起きる。セブンイレブンで買ってきたサラダと食べたのち、月刊ドライブインを取り扱っていただいている書店に新刊の案内を送り、過去に通販を申し込んでくれた人たちにダイレクト・メールを送る。他にもやるべきことはあるのだが捗らず、サラダチキンで昼食を済ませる。午後、取材をお願いするつもりで手紙を送っていた店に電話。いたく不審がられる。少し粘って話を聞かせてもらえないかお願いするつもりだったが、同封していた雑誌を「こんなのが雑誌なんですか」と言われ、糸が切れたように諦める。

 夕方になって部屋を出る。古書現世をのぞいたのち、ノンアルコールビール片手に散歩に出る。昨日の名前の挙がった神楽坂界隈はどんな雰囲気かを確かめるべく、ゆらゆら歩く。早稲田と神楽坂のあいだ、早稲田通りを一本入ると細い路地が多く、落ち着いた気持ちになる。今は大通り沿いだが、大通りにはもう飽きている。「la kagu」と「かもめブックス」を冷やかし、「龍朋」と「カド」の前を通り過ぎたあたりまでは「神楽坂も悪くないかも」と思っていたのだが、そこから早稲田通りに戻るとうんざりする。チェーン店か、そうでなければいけすかない店ばかりだ。歩道が狭いのに広がって歩くグループが多く、僕が酔っ払って歩けばトラブルのもとだろう。飯田橋駅まで歩き、「神楽坂はないわ」と知人にメールして、東西線で引き返す。

 コットンクラブで待ち合わせ。白ワインをボトルで注文し、再び作戦会議。やはり引っ越すとすれば風景のいい場所がいいだろう。原稿に煮詰まったとき、夕方になって缶ビール片手に散歩したいとき、「この風景があるからここに住んでいる」と言える場所が近くにあって欲しいと思う。真っ先に浮かぶのは川べりだ。家賃相場と知人の通勤ルートを考えると、まずは清澄白河が浮かぶ。ここなら隅田川も近く、最寄りの繁華街が銀座になるので、東京の見えかたがガラリと変わるだろう。広さを求めるのであれば石神井公園という案も浮かんでくる。石神井公園であれば近くに知り合いも住んでいて、散歩向きな公園もある。ただ、それだと最寄りの繁華街は池袋になる。

 石神井公園をアリだと考えるのであれば、南に下って荻窪あたりだってアリだろう。それなら通いたくなる酒場も、素敵な書店もある。知り合いだって住んでいる。最寄りの繁華街は新宿だ。だが、僕は平気だとしても、毎朝中央線で出勤する知人は大変かもしれないなあ。それに、山手線の西側に住むというのはどうもしっくりこない気がする。清澄白河はやり過ぎだとしても、湯島から根津あたりに住むのは楽しそうだ。不忍池のあたりを散歩できるし、上野には飲み屋がたくさんある。神保町にも出やすく、「バー長谷川」がある。あれこれ話をしているうちに、根津に心が傾いている。