昨日の日記、Oさんのイニシャルが間違っていた。なぜ間違えてしまったのだろう。正しくはO.Sさん。

 朝8時に起きて、新聞を読む。今日の朝刊は読みでがなかった。昼、知人と一緒に出かける。坂を下っていると陽射しが春だ。冬にだってこんな陽射しはあるのかもしれないけれど、こんなふうな気持ちになることはないだろう。近くの中華料理店「天外天」に行ってみるも予約で一杯だ。春になったからか、町を行き交う人の数も多くなったように感じる。啓蟄を過ぎて活動が活発になるのは虫だけでなく、人間にもあてはまる。もう中華の口になっていたので、「砺波」というこじんまりした中華料理店に入る。高齢のご夫婦が経営されている店で、入店するのは4度目。ビールを2本と、餃子と酢豚と五目ワンタンを注文する。いつかオムレツライスやカレーライスを食べてみたいと思っているけれど、結局中華らしいメニューばかり頼んでしまう。テレビでは『のど自慢』が流れていて、その歌唱をああだこうだ言いながら食べる。他のお客さんも『のど自慢』に見入っていた。

 バスに乗り、池之端二丁目で降りる。バスが激混みだったため喧嘩になる。コンビニでビールを買って、不忍池を眺める。こんなにあったのかと驚くほどボートが浮かんでいた。しばらく池を眺めたのち、上野の山を目指して歩く。桜は満開だ。もこもこしていて美しい。人だかりができている桜が一本だけあり、それは濃いピンク色の桜だ。公園の端にあるトイレで用を足したのち、上野の山をのぼる。知人は西郷さんを見るのが初めてだという。すごい人出だ。ここでも一箇所だけ人だかりができている場所があり、やはり濃いピンク色の桜なのだった。知人とふたり、「どうしてあれを愛でるのか」と話す。適当なところで引き返し、アメ横に移動する。ここもすごい混雑ぶり。酒場はどこも大賑わいだったので、上野で飲むのは諦めて丸の内に向かうことにする。

 新丸ビルを眺めて、路面店が建ち並ぶ通りを歩く。何軒かに入ってみたけれど、特に買いたいと思えるものはなかった。丸の内に建ち並ぶ店は、丸の内で働く層をターゲットにしているのだから当然かもしれない。いくつか格好良いなと思えるものはあったが、やはり高価で、分割払いでも手に入れたいと思えるほどでもなく、ただ歩く。知人は生ビールが飲みたいと言う。こういう通りであればカフェがあるだろうと思っていたのだが、ほとんどカフェはなく、あったとしても小さ過ぎて行列ができている。この通りは外国をモデルにしているのだろうけれど、カフェがないのは致命的だと思う。ただ路面店が建ち並ぶばかりで、立ち止まる場所がなく、賑わいを感じることもなかった。

 日比谷に出る。ミッドタウン日比谷の姿を見て、「これはさすがに」と知人も言葉をなくしている。地形に沿ったふうに作っているけれど、六本木と変わらない質感だ。「ほんとに、地方都市みたいやね」と知人が言う。昔、このへんの映画館にゴダールを観にきて、東京はすげえな、こんな感じの場所があるんやと思ってたけど、全然その面影がない、と。今のアパートに引っ越して、地下鉄に乗れば乗り換えなしで10分で日比谷に出れるので、「これからは丸の内や日比谷界隈で楽しく過ごせる」と思っていたのだが、こうして歩いてみると、特に通いたいと思える場所は見当たらなかった。日が暮れる前に日比谷線で根津まで引き返し、「バー長谷川」でハイボールを飲んだ。昼から飲んでいたせいか、20時過ぎには眠ってしまった。