朝7時に起きる。昨晩のうちに作っておいたコンソメスープで朝食。コーヒーを大量に淹れて、魔法瓶に入れておき、『S!』のテープ起こしを始める。昼前には終わり、パスタを茹でて、キューピーの明太子ソースをかけて食す。郵便受けを覗くと、34通目、35通目、36通目の『手紙』がまとめて届いていた。申し込んでくれていた人たちにメールを送信。3月26日付で最後の1通を発送した旨。もし届かなかったぶんがあれば連絡をください、そして申し込んだきっかけや感想などをもたえると嬉しいです、と書き添える。午後は『S!』の構成。18時に完成し、メールで送信。

 缶ビール片手に地下鉄を乗り継ぎ、中目黒へ。駅の構内からすごい混雑だ。今日は花見をする約束をしていた。駅の近辺、細い路地にも人が溢れていて、高級車がいかにも歩行者は迷惑だといった様子で走り去る。まずはムトーさんと牛越さんと合流し、ライフで缶ビールを買って目黒川沿いを歩く。今日は平日だというのに、暖かいからかすごい人出だ。「神田川と全然違う」とふたりが言う。目黒川がこれだけ賑わうのは、ほかのお花見スポットと異なり、道端にずらりとお店が建ち並んでいるからだろう。飲食店が軒先でポテトやグリル料理を出している。そして、目黒川といえばスパークリングワインだ。僕が数年前に都内各地のお花見スポット巡りをしたときにも、プラスチックのフルートグラスでスパークリングワインを飲んでいる人は大勢いたが、ここ数年のインスタ映えの流れが何かを加速させたのか、イチゴだの何だのとフルーツがゴテゴテ盛られたスパークリングワインを片手に歩いている人たちと何度となくすれ違う。

 神田川の桜は川に降り注ぐようにしだれているけれど、目黒川の桜は上に伸びている。そして、LEDの光が力強く、桜がとても白だ。柳橋というところまでたどり着くと、少し花見客の数が落ち着いてきたので、そこで立ち止まって桜を眺める。ムトーさんが言う。「滝田ゆうみたいにさ、もうなくなった風景を描く人もいるじゃん。でも、その一方で、はっちみたいに今のことを書き留めようとする人がいるじゃん。それは何が違うんだろう?」。滝田ゆうが描く玉の井は彼の頭の中にしかなく、その世界を描くとき、滝田ゆうは現在から過去を見つめている。でも、僕が何かを書くとすれば、いずれその風景がなくなってしまって、その風景を思い返したり懐かしんだりする未来のことを想像している。それはベクトルが逆だと思いますと答える。

 水玉さんも合流し、「レモンハウス」へ。「中目黒のサン浜名みたいな店」と牛越さんに紹介されてその店に向かうことになり、さすがに中目黒に「サン浜名」のような店はないだろうと訝しがっていたのだが、到着してみると本当に「サン浜名」のような店だ。まったく気取ったところがなくて、落ち着ける。チューハイ、梅サワー、生ビールで乾杯。どの料理もコンビーフとキャベツの炒め物が特においしかった。ちょっとこの店に通ってみたくなるけれど、中目黒に出かける機会が今後どれだけあるだろう?