昨晩は夜中に何度も目が覚めた。カプセルホテルにいびきが響く。それにやはり背中が凝る。6時にはカプセルを這い出して、ジョギングに出る。ホテルの近くは飲み屋街だということもあり、朝まで飲んでいた人たちが店から掃き出されている。すごいなあ。朝まで飲んだことなんて、記憶にある限りは一度もなく、終電くらいにはすっかり酩酊して帰ってしまう。中之島に出て、川べりを走る。このあたりは綺麗だが、それでもすえた臭いがする。ホテルに戻ると、カプセルから這い出してきた他のお客さんがテレビを眺めている。G20に出発する麻生財務相に記者が質問を投げかけているが、これまでにないほど強気だ。これからも取材で顔を付き合わせるとなると丁寧な口調にならざるを得ないだろうに、どうも問い質すような口調である。

 大浴場でシャワーを浴び、新大阪駅へ。いつのまにか水了軒のお弁当が復活している。お腹が減ったのできつねうどんでもと思っていたのだが、改札をくぐった先にある店だと700円以上する。きつねうどんに700円は払えず、それならばとホームにある弁当屋でサンドイッチでもと思っていると、ミックスサンドが700円だ。こんなに高かったっけと首を傾げつつ、151円のおにぎり(辛子明太子)とホットコーヒーを購入し、新幹線に乗る。

 新幹線の中では原稿を書いていた。岡山を過ぎたあたりで荷電あり。見知らぬ番号だが、ドライブインを取材して欲しいと依頼をくれた人だ。昨日のうちに「明日向かいます」と返信していたのだが、見落としてしまっていて、慌てて電話をくれたようだ。「ほ、ほんとに山口に向かわれてるんですか・・?」「お住まいは東京なんですよね・・?」「なんか・・すごいですね」と若干引かれてしまう。よく考えれば、それもそうか。お店にも連絡を取ってくださるとのことで一安心。

 10時過ぎに広島に到着し、在来線に乗り換え。僕が高校時代に利用していた頃に比べると、広島駅もずいぶん様変わりしたが、路線の区分けが「G」だのなんだの、謎のアルファベット表記になっていて戸惑う。山陽本線にはかなりの数の外国人観光客が乗っていて、彼らは皆、宮島口で降りてゆく。終点の岩国駅で乗り換える。ドライブインは駅から少し離れており、駅から20分くらいは歩くことになるので、ここで荷物をコインロッカーに預けておく。岩徳線という電車に乗り、引き続き原稿を書いているうちに乗り過ごしてしまい、一つ先の玖珂駅で電車を降りた。

 調べてみると、玖珂駅からだと歩いて40分以上かかるらしかった。さすがに遠く、駅前にいたタクシーでドライブインへと向かう。12時少し前に到着して、まずは食事をいただく。せっかくなので瓶ビールも頼んだ。あとからひとりお客さんがやってきたけれど、今日は空いているとのことだってので、12時45分に取材を始める。たっぷり話を伺って、写真を撮る。どんな店にも歴史がある。「駅まで送りますよ」と言ってくださるのでお言葉に甘えることにして、お会計を済ませたあとで駅まで送ってもらう。コインロッカーに預けたけれど、結局歩かずに済んでしまった。

 駅に着いたのは14時45分頃だったが、次の電車まで1時間以上ある。駅員さんに喫茶店はないかと尋ねてみたのだが、この近くにはないとのことで、駅の待合室で原稿を書いて過ごす。『月刊ドライブイン』の取材に協力してもらった方にゲラを送っていたことを思い出し、電話をかける。電話をかけた先は会社だったのだが、ご本人は不在で、届いているかどうかも不明だという。急に不安になる。明日折り返し連絡をもらう約束をして電話を切る。

 16時34分発の岩徳線に乗り、岩国で山陽本線に乗り換える。基地で働いているのだろう、屈強な外国人がいる。同じ車両に猫を連れた乗客がいるらしく、ときどき鳴き声が響くのだが、そのたびににこやかな笑みを浮かべているのが印象に残る。彼らは広島で降りていった。19時、八本松駅に到着。駅まで迎えにきてくれていた母の運転するクルマで実家に帰り、夕食。コロッケ、鶏肉のトマト煮、ほうれん草のおひたし。食後は部屋に戻り、『月刊ドライブイン』の原稿を完成させる。こちらのお店は「きっと素敵に書いてくださるだろうから、原稿のチェックは要らないです」と言ってくださっているので、明日、もう一本の記事で取材に協力してもらった方と連絡がつけば入稿できる。ホッとしたところで赤ワインを飲み始める。