朝8時に起きる。今日もネギはなく、豆腐だけの味噌汁を作って食す。昨晩は久々に酔っ払って帰宅してしまったので、しずしずと過ごす。午前中は『不忍界隈』の創刊の辞を推敲する。行き詰まるとつげ義春特集の『spectator』をめくったり、小高の「フルハウス」で購入していた『つげ義春コレクション 近所の景色/無能の人』を読んだり。ふと、『hb paper』という3号で終わってしまったリトルマガジンを創刊するきっかけになったのも『spectator』だったことを思い出す。

 昼、キャベツと酒盗のパスタを作って食す。午後はテープ起こし。16時になってアパートを出て、バスに揺られて池袋へ。納税地変更届というのを出す必要があるということを知らず、今になって届けにやってきたのだが、タッチの差で閉まったところだ。職員の方に「そちらに夜間用のポストがありますので」と案内されて、そこに投函。アウドドアグッズを販売している店に立ち寄り、キャンプ用品を物色する。プラスチックで出来たワイングラスや、折りたたみ式のテーブルなどを眺める。これがあれば楽しそうだが、それなりの値段がするのでグッと我慢。

 山手線で新宿に出て、紀伊國屋書店。2階に上がると、エスカレーターを降りてすぐの柱のところに、穂村弘『水中翼船炎上中』がドーンと並んでいる。今日が発売日だ。そこに限らず、あちこちに並べられており、17年ぶりの歌集刊行は一つの事件であるのだなと感じる。多和田葉子『地球にちりばめられて』、ちくま文庫つげ義春コレクション――棚には並べられておらず、下のストックの引き出しに隠れていたのを取り出した――と一緒に購入する。

 わざわざ新宿まで移動してきたのは、穂村さんの歌集刊行記念トークイベントがあり、歌集を購入すると整理券がもらえると聞いていたからだ。だが、レジの後ろに貼られたポスターに「配布は終了しました」とあるのを見つけてしまい、落ち込む。何時頃に終わったんですかと訊ねてみると、15時頃だという。開店時刻を目指してやってこようかとも考えたのだが、夜に池袋で約束があり、夜までずっとぶらついているとくたびれそうだなと思って夕方になってやってきたのだが、もっと早い時間に来るべきだった。

 がっくり落ち込みながら「らんぶる」に入り、アイスコーヒーを注文。パソコンを取り出し、テープ起こしに取り掛かろうと思ったのだが、早く読みたくなってパソコンの上に『水中翼船炎上中』を置き、ページをめくる。先日の「みえるわ」を経たことで、言葉というものに詰まっているかけがえのなさがはっきりみえるようになったような気がする。そして、昨年末の「ぬいぐるみたちがなんだか変だよと囁いている引っ越しの夜」という作品のことが、もっと具体的にいえばあのとき使われていたAndy Shaufの曲が頭の中で再生される。

 お酒が飲みたくなり、「日本再生酒場」に移動。店員さんに「ムックに載ってましたね」と伝える。チューハイを飲みながら引き続きページをめくり、3杯飲んだところで店を出る。伊勢丹前から池袋駅東口行きのバスに乗り、東京音楽大学前で降り、「升三」にたどり着いたところで最後の短歌を読み終えた。今日は飲み会に誘ってもらっていたのだ。少し遅刻してしまったが、僕はホッピーを注文して乾杯。一人をのぞけば久しぶりに話す人ばかりで、会自体は楽しかったのだが、この場所で僕が言える言葉はないかもなという気持ちになり、ホッピーを2セット飲んだところで帰途につく。