朝7時に起きて、味噌汁を作る。しばらく前に築地で購入した鰹節がなくなったので、今日はほんだしを使ったが、やはり味が違うものだなと感じる(どちらが好ましいかという話とは関係なく)。僕の舌では味の違いなんてわかるまいと思っていたが、毎日のように食べていればさすがに気づくものなのだなあ。午前のうちに郵便局に出かけ、スマートレターを50通購入する。明日の午前中に『月刊ドライブイン』が刷り上がるので、通販の発送の支度を済ませておく。そのうち何通かに同封する手紙を書き、ラベルを作成する頃にはもうお昼だ。サバの味噌煮缶とキャベツのパスタを作ってみる。さすがに合わないかなと思ったが、案外うまかった。

 午後、こまごました用事を片づけているうちに時間が過ぎてしまって、急いで銀座へ。東京に来ているU・Mさんと資生堂ギャラリー前で待ち合わせ、遅刻したことを中に入る。地下に降りていくと、「Thing~Being」という作品が展示されていた。床には楽器の製造過程で出る金属材が敷き詰められており、その上を歩くことができる。金属片は足に触れると音が鳴る。展示に合わせた説明文を読むと、「楽器材であるモノとの関係性、また、会場にいる他者との関係性を視覚的、聴覚的に認識することができます。『人間の存在が音化する』作品です」とある。こういう場所で踏みならそうとしない私は音化せず、どこに存在しているのだろう。

 展示を観終えたところで、まだ15時半だ。せっかく銀座にいることだし、Uさんも「いつも橋本さんが飲んでる場所で飲みませんか」と言ってくれるので、缶ビールを2本買って日比谷公園に出る。ビアガーデンは平日も開催されているようだが、平日は16時からとあり、まだ閑散としている。木陰のベンチに座り、あれこれ話す。Uさんは以前に比べて飲むペースが変わってきたと話していたが、僕も最近はなるべくゆっくり飲むように心がけている。

 じっくり2缶飲んでもまだ17時前だ。せっかくだから公園のハシゴをしませんかと提案し、再開発されたミッドタウンを冷やかし、皇居外苑へ。前に来たときより1時間早く、まだ日が明るいので観光客も目立つが、それでもベンチに座れないほどではない。少しずつ人が減っていく皇居外苑で、白ワインをロックでゆっくり飲んだ。やはり皇居外苑で飲むのはとても愉しい――つくづくそう感じていたところで問題が発覚する。すぐ近くにあるトイレが16時で閉鎖されてしまっていたのだ。つい4日前にここで飲んだときには日が暮れても空いていたというのに、一体どうしたことだろう?

 日が暮れ始めたところで皇居外苑を後にして新宿に出る。よく行く酒場に出かけたのだが、今日はあまり雰囲気が良くなくて、ホッピーを1セット飲んだところで店を出た。せっかく一緒に飲みに来てもらったのに、Uさんに申し訳ない。せっかくだから歩きませんかと話して、山手線脇の道路を歩いて高田馬場に出る。久しぶりに夜の高田馬場を歩いてみると、なんと若者の多い町だろうかとくらくらする。新目白通りに出て、毎日通っていた近所のスーパーマーケットの前で写真を撮ってもらったのち、「古書往来座」に至る。セトさんとも乾杯したのち、池袋駅で別れる。夜の街を散策のは楽しい。