8時過ぎに起きて、入念にストレッチをしたのち、ジョギングに出る。明日と明後日は雨で走れなそうだから、今日は長い距離を走ることにする。上野桜木から鶯谷を経由し、浅草を目指す。今日は気温が高く、汗が噴き出してくる。何度もタオルで拭いながら隅田川に出て、しばらく川沿いを下り、蔵前橋で右折。初めて鳥越という住所に足を踏み入れると、今日はお祭りがあるらしく、屋台がいくつも並んでいる。一本入れば「おかず横丁」という路地があり、なかなか楽しそうだ。12キロほど走り、アパートにたどり着く。この倍の距離を走ればハーフマラソンだが、走りきれるものだろうか。

 シャワーを浴びたのち、昨晩のうちに作っておいたコンソメスープを温めて、食パンを焼き、コーヒーを淹れ、知人を起こして朝食をとる。12時過ぎにアパートを出て、荻窪にある本屋「Title」。今日は土曜日だということもあり、きっと誰かきてくれるだろうから、一日在廊することにする。まずは二階に上がってみると、展示を観てくださっている方がいらっしゃる。邪魔をしないように静かに動き、未映子さんが送ってくれた花のスポンジに水を含ませて、芳名帳のそばに「一階のカフェにいます」と書き添えておき、カフェでアイスコーヒーを注文する。今日はほとんど夏のような気候だから、アイスコーヒーがいつにもまして美味しく感じられる。

 2時間ほど経過したところで、再び二階に上がる。ちょうど誰もいなかったので、37通の手紙たちが剥がれないように、1枚ずつぎゅっと壁に押しつける。初日はA・Iさんがギタレレを弾いてくれていたから音があったけれど、今は無音で、そのことがとても寂しいことであるように感じられる。そこで、Aさんがいつだか送ってくれた練習音源をiPhoneから小さな音量で再生し、リピートされるようにしておく。再びカフェに戻り、八丁ブレンド(浅煎り)。2時間ほど経ったところで、今度はTitleブレンド(深煎り)を注文して、ずっと『月刊ドライブイン』の原稿を書いていた。夜になっても原稿を書き終えられず、ハートランドを飲みながら書き続ける。

 20時半になったところで、何冊か本を購入して「Title」をあとにする。土曜日だからきっと誰かきてくれるだろう。そんなことを思っていたけれど、知り合いは誰ひとりやってこなかった。珍しく絶望的な気持ちになる。知人にメールすると、「そんなもん」「人気者やないんやし」とドライな返信が返ってくる。書かれた文章というのは、今現在という時間に読んでもらえなくとも、いつか未来に読んでもらうことができる。そのことには確信を抱いている。でも、こうして展示を行なっているあいだは、そんなふうに安心して過ごすことはできない。

 やるせないので、荻窪駅前の「鳥もと」(2号店)に立ち寄る。チューハイと刺身の盛り合わせ、それにもつ煮込みを注文。小一時間で切り上げて、ハイボールを飲みながら帰途につく。大した量を飲んだわけでもないのに、アパートにたどり着く頃にはへろへろに酔っ払っていた。