1月29日

 7時に目を覚ましたものの、疲れが溜まっているのか、布団の中でグズグズ過ごす。ぽちぽちアイフォーンをいじっていると、「お前の母ちゃんでべそ=お前の母親と寝たことがある」だと知る。知らなかった。今では常套句になっているけれど、それを最初に口にした人の悪意を思うと、なんだかくらくらする。昨晩のうちに買っておいたファミリーマートの焼きそばコッペパンを食す。パンがぱさぱさしていて、セブンイレブンの焼きそばパンのほうが美味しく感じる。

 13時45分にアパートを出て、セブンイレブンで高菜と明太子のおにぎり、それに赤飯おこわのおにぎりを買い求める。それをぱくつきながら谷中ぎんざに行き、「越後屋本店」でT書房のAさん、営業部のOさんと待ち合わせ。ほどなくして新聞社の記者の方がやってくる。これから『ドライブイン探訪』の著者インタビューを受けるのだ。仕事場かご近所かで、橋本さんらしい場所で撮影をと依頼され、僕が真っ先に思い浮かべた場所も、それを相談したとき知人が真っ先に挙げた場所も「越後屋本店」だったので、ここで撮影させてほしいとお店のお母さんにお願いをしておいたのだ。「せっかくだからビールを注文しましょうか」と、ビールを注文してもらって、これから取材に答えるのにいいのだろうかとどぎまぎする。

 10分ほどで撮影が終わり、夕やけだんだんを登った向こうにある「ルノアール」に入り、アイスコーヒーを飲みながら取材を受ける。印象的だったのは、「文章を読んでいても、こうしてお話ししていても、すごく真面目な方だということが伝わってきて、その方の関心がドライブインに向かうという非対称性が面白い」と記者の方がおっしゃったこと。編集の方も同意しつつ、「ゲラのやりとりもすごく真面目で、きっちりされているけど、でも、私たちの知らない顔があって、たとえばさっきの酒屋さんで夕方からお酒を飲んでいるような側面もあるんだろうなと今日思いました」とおっしゃっていた。自分が真面目だという感覚はなくて、知り合いからは基本的に「いつもお酒を飲んでる人」しか認識されていないだろうなと思うと、おかしくなる。そして、その関心がドライブインに向かうことが非対称に見えるのだなというのも新鮮だった。

 1時間ほどで話し終えて、「越後屋本店」に引き返す。バタバタとお騒がせしましたとお詫びを言いつつ、雪の茅舎の熱燗をいただく。さっきお母さんが買ってきてくれていた、近くの貝屋さんで販売されている串焼きをツマミに飲んだ。「往来堂書店」に出て、入荷していただけているかどうか確認する。たくさん入荷してくださっていた。一度アパートに引き返し、18時に再び出かける。南北線丸ノ内線を乗り継いで新宿に出て、紀伊国屋書店新宿本店をのぞく。『ドライブイン探訪』はどこに並んでいるだろう。一階の新刊台――にはさすがに置かれてないか、じゃあ二階のノンフィクションだろう。そう思って二階にあがるも見当たらず、検索機で調べてみると地下一階の「国内紀行」の棚にひっそりと並んでいた。そうですか……。前は『イタリア再訪日記』まで仕入れてくれて、なんと新刊台に並べてくれたというのに、そうですか……。こんなにがっくりした気持ちになるのだなと思うと、おかしくなってくる。

 アルタの地下にある「オンデーズ」で、沖縄で踏んづけて歪んでしまった眼鏡のフレームを修理してもらったのち、思い出横丁の「T」ヘ。ホッピーセットとつくねを注文し、タイミングを伺って『ドライブイン探訪』を手渡す。「おお! やったじゃん!」と喜んでくれて、こちらまで嬉しくなる。急遽作ったチラシを手渡すと、アルバイトの店員さんに渡し、すぐに壁に貼ってくれる。ホッピーを1セット飲んだのち、チューハイを2杯。20時過ぎに店を出て、新宿5丁目「N」。最近はほとんど足を運ばなくなってしまったけれど、昔は週に何度か通っていた。地震が起きた日、僕は知人に猛反対されながらも自転車で新宿に出て、よく足を運んでいる新宿3丁目「F」と新宿5丁目「N」の様子を見にきて、静かにソーダ割を飲んだ。その二つの店には手渡しておきたいと思っていたので、お店の方に『ドライブイン探訪』を渡した。