1月30日

 8時過ぎに起きる。昨日からうっすら感じていたことだが、風邪を引きかけている。グズグズと布団の中で過ごす。昼、セブンイレブンで麻婆豆腐丼を買ってきて平らげて、薬を飲んだ。体温計が電池切れで熱をはかれず、インフルエンザではないかと不安になる。沖縄滞在中の日記を書いていたものの、しんどくなってきたので横になる。1時間半ほど寝ると少し回復したので、再び日記を書き綴る。誰かに読まれるかどうかもわからないのに、どうしてこんなに書き記しておこうと思うのか、謎だ。

 16時半、「古書信天翁」へ。追加で注文をもらっていた『不忍界隈』と、昨日編集者の方から預かっていた『ドライブイン探訪』を届ける。サキ先輩が直取引で扱いたいと言ってくださって、それを編集者の方に伝えたところ、送料で負担をかけなくて済むようにと、昨日の取材に持ってきてくださっていた。病み上がりの先輩に「お大事に」と伝えてアパートに帰り、日記の続きを書く。19時にアパートを出て、すぐ近くのバス停に乗って池袋を目指す。席に座れたので、車内でも日記を書き綴る。

 池袋に到着すると、まずは書店を巡る。「三省堂書店」はノンフィクションの棚に置かれている。西武の地下で資生堂のクッキーを買い求めたのち、「ジュンク堂書店」。一階の新刊台――にはさすがにないか、三階のサブカルチャーやエッセイのコーナー、にもなく、四階の社会学、にもないか、五階の社会や事件の棚にも並んでいなかった。一体どこにあるのだろうと検索機で調べると、ここでも国内紀行の棚にひっそり並んでいる。僕自身、紀行本は好きだけれど、この本を国内紀行にしか置いてくれないのかと思ってしまう。

 20時、「古書往来座」へ。担当編集者の方に繋いでくれた、のむみちさんにお礼を述べたかったのだけれども、今日はお休みだ。資生堂のクッキーを預け、ムトーさんと近くの「升三」という酒場に入り、ビールで乾杯。「はっち先生、処女出版おめでとうございます」とムトーさんが笑いながら言う。「本が出るってどんな気持ち、やっぱり嬉しい?」と尋ねられて、少し考える。最初に本を手に取ったときはただただ嬉しかったけれど、あとはそわそわするばかりだ。そわそわというよりも、どういう扱いをされるのかということに目を光らせてしまう。ほどなくして、うーちゃん、セトさんもやってくる。うーちゃんは『ドライブイン探訪』を買ってくれていて、昨日世界堂で買っておいた銀色のペンで、初めてサインを入れる。

 23時過ぎ、酔っ払ってしまったので、一足先に店を出る。そこで記憶は途絶えている。ふと目を覚ますと電車の中で座っている。電車は停まっていて、「乗り換えを待つので、発車まで10分ほどかかる見込みです」とアナウンスが流れている。液晶モニターには「立川」と表示されている。これは一体どういうことだろう。アイフォーンで確認すると、時刻は1時15分だ。池袋から山手線で日暮里に出るはずが、どうして立川にいるのだろう。狐につままれたような気持ちで電車を降りる。タクシーで帰るかとグーグルマップを開いてみたが、この距離でタクシーに乗ると一万円は確実に超えるだろう。5千円の宿を見つけ、幸運にもフロントで充電ケーブルを借り、コンセントに繋いですぐに眠りにつく。