2月14日

 7時過ぎに起きる。 布団にくるまったままアイフォーンを眺め、昨晩の感想ツイートを探して読む。タイムラインには、見汐麻衣さんがnoteで「寿司日乗」(https://note.mu/19790821/)というのを書き始めたと知る。こんなに面白い日記を書かれては困るけれど、誰かの日記が読めるのは嬉しいし、それが好きな人の日記であればなおさら嬉しくなる。入念にストレッチをして、ジョギングに出る。今日は身体が軽い気がすると思っていると、最初の1キロのラップが6分ジャストだ。ここ2週間はジョギングの頻度が落ちているけれど、走れる身体になりつつある。

 ジョギングの帰りに「ベーカリーミウラ」に立ち寄る。一緒に営業していた「平澤剛生花店」が日曜日で営業を終えて、パン屋さんだけでの営業は今日が初めてだ。扉を開けると、当たり前だが受ける印象が違っている。しみじみした気持ちで店内を見渡していると、僕の気持ちを見透かしたのか、店主のTさんが「雰囲気変わりますよね」と言う。サンドウィッチとコーヒーのセットが100円引きだというので、それを注文する。994円。これからもよろしくお願いしますと言っていただき、お辞儀をして店を出る。好きなお店にお金を払えるように、頑張って稼がないとなあ。コーヒーがこぼれないように歩いてアパートに帰った。

 パソコンを開くと、重版の報せが届いている。一気にドーンと増刷されるわけではないけれど、やはり嬉しいものだ。ただ、この本は最低でも1万部にはのせなければと思っているので、もっと押し上げていかなければ。これまでは「今の読者に届かなくても」なんて思っていたのに、『ドライブイン探訪』にはまったく別の感覚でいるのはなぜだろう。昼、スーパーマーケットに出かける。マルちゃん正麺が売っていなかったので、サッポロ一番(味噌)を購入し、お昼ごはん。午後はひたすらテープ起こしを進める。2月9日のトークイベントを販促用に掲載できないかとお願いしてあるので、そのトークを起こす。編集者のMさんにも褒めていただいたけれど、こうして文字にしてみると、なかなか面白い話だ。自分が興味ある話をしているのだから、当たり前かもしれないけれど。

 18時、カップヌードル(カレー味)を買ってきて食べていると、執筆依頼が届く。やっぱり、何か一つ仕事が形になれば、こうして依頼が入ってくるのだなあ。これまで知り合いの編集者は多かったけれど、頼むに頼めないと思っていた人もいるのだろう。自分で『月刊ドライブイン』を出すほかなかったこと、あれこれ思い返す。20時、白山駅から神保町に出る。「東京堂書店」を覗くと、週間ベストセラー(総合)の第5位に『ドライブイン探訪』が並んでいる。おお。20時半、『P』誌の取材を受ける。いつもは取材をする側なので、記事にする際に選択肢となるエピソードを少しでも増やせたらと思いつつ、いや待てよ、あんまりあれこれ話しても構成が大変だろうかとも考えてしまう。話しているカットも撮影していただき、「たぶんこの角度で話していると撮影しやすいだろう」と考えているうちに、今何を話していたのか危うく見失いそうになる。

 1時間15分ほど話を聞いていただいたのち、九段下に出る。アパートを出たときにはフル充電だったアイフォーンがなぜか残り1パーセントになっていて、仕方なしにセブンイレブンに立ち寄り、缶ビールとLightningケーブルを買い求める。パソコンに接続し、充電しながら都営新宿線に乗り、新宿に出る。地下街を歩いていると、作業服姿の人たちがあちこちで荷物を運んでいる。天井がところどころむき出しになっていて、その下に単管を組んでいる。補強工事だろうか。これから高速バスに乗るのだろう、スノーボードを背負ったりスーツケースを引いたりしてヨロヨロ歩く大学生たち。その隙間を抜けて思い出横丁に出て、「T」へ。「こないだ(編集者の)Iさんが来て、『はっちゃんの本が出たんだよ』って言うから、『もうもらったよ』って言っといた」とマスターが笑う。ホッピーセットとぼんじり2本、それにたたみいわしを注文。

 ホッピーセットを飲み干したところで店を出て、新宿3丁目まで歩き、「F」。お店のVさんが「重版おめでとうございます」と言ってくれる。いつものようにボトルの焼酎を水割りで飲むつもりでいたけれど、1杯ぶんしか残っていなかった。財布を確認すると千円札が2枚しか入っておらず、新しいボトルを入れる余裕はなさそうだ。生ビールを1杯だけ飲んで、また来ますと言って帰途につく。