5月3日

 7時過ぎに起きる。洗濯機をまわして、布巾と雑巾を手洗いして除菌・漂白し、干す。シャワーを浴びて、コーヒーを淹れて、少しだけタンブラーに入れてアパートを出る。二重橋前駅で千代田線を降り、不安な気持ちになりながら歩き続け、京葉線のりばにたどり着く。手を繋ぐカップルや小さな子供を連れた家族連れが多くいて、ああそうだ、この路線はディズニーランドの最寄駅があるのだと思い出す。ただ、ディズニーだけでなく、僕の目的地である海浜幕張で降りる人も大勢いる。一体何があるのかと不思議に思っていると、幕張メッセフリーマーケットが開催されているらしかった。こんなふうにゴールデンウィークらしい日々を過ごしている人たちに出くわすと、びっくりしてしまう。

 10時半にbayfmにたどり着く。サトミツさんを見かけ、リトルトゥースとして声をかけたい衝動に駆られるが、そんなふうに声をかけられても困るだろうと我慢する。11時、『MOTIVE!!』という番組に出演する。MCは安東弘樹さん。『アッコにおまかせ!』に出演されている姿をずっと観ていたので、不思議な感じがする。どこのドライブインの話をしようかと、事前に想定していた内容があったのだけれども、「本を拝読していて、最後の『ドライブイン薩摩隼人』の方の話をどうしても紹介したいんです」とCM中に安東さんが言ってくださる。そんなふうに熱心に読んでくださったのかと嬉しくなり、話を組み直して、「薩摩隼人」の話をする。安東さんが読んでくださったのはこの箇所だ。

「今はな、民主主義を知らん人が多いよ」。貞美さんはそう切り出す。「人は皆、それぞれ考えが違うでしょう。違う考えを尊重する、それが民主主義よ。でも、今は違う考えを持っとる人を否定するでしょう。それではいかんわけよ。そうすると争いが生まれる。『軍国酒場』をやりよったけど、右翼でも国粋主義者でもないわけよ。戦争はいかん。もし戦争が起きれば私は逃げますよ」

 途中に1分ほどニュース原稿が読まれる時間があり、そこで気づいたのだけれども、今日は憲法記念日なのだった。あっという間に30分が経過し、お礼を言ってスタジオを出る。窓の外にはマリンスタジアムが見えて、向こうに海が広がっていた。ケータイを控え室に置いていたので、その風景を写せなかったのが悔やまれる。同じように京葉線と千代田線を乗り継ぎ、1時間かけて千駄木に帰ってくる。駅前で知人と待ち合わせ。酷い混雑ぶりだ。よく晴れているせいか、ソフトクリームを頬張って歩く人が大勢いる。どうしてこんなに細い道で、二人で並んで歩くのだろう。なんとか「砺波」にたどり着くも満席だ。他に選択肢も浮かばず、待つことにする。道路の向かい側の蕎麦屋も寿司屋も、長い列が出来ている。

 10分ほど待って、入店。まずはビールと餃子を注文する。別のテーブルのお客さんが、麺を皿に出している。食べきれなかったとしても、わざわざ出す必要はないだろうに。不思議に思っていると、その麺をビニール袋に入れて、鞄に仕舞っている。餃子が運ばれてきたところで、ラーメンとチャーハンを追加する。瓶ビールを2本飲んだ。テレビから大きな歓声が聞こえる。誰かが250本目のホームランを打ったらしかった。会計を済ませて店を出る。よみせ通りから流れてくる人の波だけで、今日は相当な人出だとわかるが、知人が「久しぶりに『越後屋本店』に行きたい」というので、谷中ぎんざを目指す。アサヒスーパードライを1杯だけ飲んだ。近くでやっている毒蝮三太夫のラジオ収録を見学に行く知人と別れ、アパートに戻る。

 18時過ぎ、バスで池袋に出る。バスは空いていたけれど、池袋は大学生くらいの若者で大賑わいだ。ビックカメラソーダストリーム炭酸ガスシリンダーを交換したのち、ジュンク堂書店に立ち寄り、何冊か本を買い求める。検索機で『ドライブイン探訪』を検索してみると、1週間前は52冊だったのに、53冊になっている。ということは追加で注文してくれたのだろう。先週は気づかなかったけれど、ノンフィクションが並んでいる1階の棚に並べてくれている。明治通りを下って「古書往来座」。のむみちさんが「『マツコ』観たよ」と声をかけてくれる。これからやりたい企画が5つくらいあると話していると、「でも、よかったねえ」とのむみちさんが言う。これまでは、どうやって形になるかわからないまま取材してたけど、形になることが見えると全然違うでしょう、と。たしかに、やりたい企画はまだどれも僕の頭の中にあるだけだけど、もうすぐ2冊目を出せることもあって、実現不可能ではないのだと思えている。

 「そうだ、瀬戸君と話した?」とのむみちさん。ゴールデンウィークで大掃除をしている人も多くて、買取が続いて店の中に入りきらなくて、外で整理をしているのだという。昨日、ちまっとした量で出張買取をお願いしたことが申し訳なくなったけれど、「はっち、団子坂はすぐ近くだから、全然いつでも気軽に声をかけて」と言ってくれる。コンビニでロング缶のアサヒスーパードライを2本買って、池袋駅に引き返す。時刻は20時を過ぎたばかりだが、酔いどれた若者たちが居酒屋から吐き出されている。山手線と総武線を乗り継ぎ、阿佐ヶ谷。やっぱり引き返そうかと思いつつも、思い切って「Roji」に入ると、ミシオさんが「あ、やっと飲める!」と言ってくれる。今日は何人かの方が店内のBGMを選曲していて、そのうちのひとりがミシオさんだ。福岡でトークイベントに出ていただいたあと、「また飲みましょう」と言っていたけれど、ようやく乾杯できた。周りの人たちに紹介してくれるときに、「氏は、普段はライターをしてるんだけど、この『ドライブイン探訪』に関しては、ルポライターだと持ってます」と、本を推薦してくれる。僕の仕事はドキュメントおよびルポルタージュだと思っているので、それを正しく言ってくれるだけで胸が一杯になり、音楽を聴きながら黙々とウィスキーのソーダ割りを4杯、ロックを1杯。