7月22日

 朝5時、歯磨きの音で目が覚める。8時過ぎに起き出して、セブンイレブンでメロンパンとアイスコーヒー、それに琉球新報沖縄タイムスを購入する。パラソル通りに出て、朝のひと時。宿にも共同のキッチンはあるけれど、ひとりで過ごせるほうが気楽だ。この界隈の良いところは、通りに佇んでいる人も多く、こんなふうに外の場所を家のように使えるところだ。毎晩のように飲み代にお金が消えていくけれど、僕はホテルで夜を過ごしたいという気持ちはない。他の地域だと1泊5000円の宿はざらにあるので、それに比べると、1泊1600円で3400円を飲み代に費やすほうが自分に合っている。そんなことを思いながら、メロンパンを齧る。セブンは大々的にメロンパンを押しているけれど、そこまでスペシャルな味とは思えない。ただ単に沖縄の人がメロンパンが好きなだけだろうか。でも、メロンパンをあんなに並べているのに、惣菜パンがソーセージドッグしかないのが勿体無い気がする。もっとピザのパンやお好み焼きパンも並べて欲しい。

 琉球新報沖縄タイムスに目を通す。沖縄でも投票率は振るわなかったけれど、その背景には選挙や住民投票が続き「選挙疲れ」があるのだと指摘されている。沖縄タイムスには自治体ごとの投票率と得票数も書かれている。一番投票率が低かったのは宮古島市で40.05パーセント、一番高かったのは渡嘉敷村で70.21パーセントとある。そして、どちらも敗れた自民党候補が多く票を得ている。那覇市に次ぐ人口を誇る沖縄市うるま市投票率は平均より低く、だからオール沖縄の候補は中部を重点的にまわっていたのだなと知る。新聞を読み終えたところで、ファミリーマートに行く。雑誌売り場で『ビックコミックオリジナル』を探すと、まだ7月20日号が並んでいる。これの次の号が7月20日に発売されたはずなのだけれど、一昨日の段階ではやはり並んでいなかった。週明けの今日には新しい号が出るのではと思っていたけど、沖縄では結構時差がある。ファミリーマートの前には小学生がちゃりんこでたむろしていて、どこかに走り去ってゆく。一体どこで遊んでいるのかと興味があるけれど、ついていきたい気持ちを抑え、宿に引き返す。

 正午頃に外に出て、八軒通りを抜けようとすると、店の方に子供達が賞状のようなものを渡しているところだ。「つぼやみまもりたい」という文字が見える。後でその店の方に聞くと、少し前に近くの児童館の子たちが防犯マップを作り、それで賞状みたいなものを配っていたのだという。このあたりの子は、児童館で遊んでいる子が多いと教えてくれる。そして、沖縄は暑くて外で遊ぶ子が少なくて、そのせいで運動能力が全国平均より低いのだ、と。市場中央通りに出て、Uさんのお店に少し立ち寄り、『ビックコミックオリジナル』を探しているけど、まだ並んでなかったですと伝える。Uさんが市場の風景に関するコラムを寄稿されていると知り、探しているのだ。沖縄だと雑誌の発売は4日ほど遅れるのだと教えてもらって、二日後かと思いながら仮設市場まで歩き、「道頓堀」で沖縄そばを食す。汁まで飲み干すと汗が噴き出して、業務用扇風機にしばらくあたる。

 15時半、沖映通りを歩く。選挙に敗れた候補の事務所があり、荷物を運び出しているところだ。若い男性が小さな軽自動車に荷物を載せている。美栄橋駅でMの皆と待ち合わせて、ホテルまで一緒に歩き、皆がチェックインを済ませるのをしばし待つ。I.Kさんが「橋本さんって、涼しげですね。いつも涼しげな気がする」と言うと、F.Tさんが「どういう感想なの、それ」と笑っている。少し歩いてレンタカーを2台借り、まずは「A&W」に出かけ、ドライブスルーでルートビアを購入する。まだ空港にいる人をピックアップしたところで17時半、当初の予定ではみーばるビーチに出かけるつもりでいたけれど止めにして、いきなり荒崎海岸に出る。夕暮れ時で、海の色が濃く見える。しばらく佇んでいたあとで、Fさんが「いつ来ても、音は変わらないですね」と言う。返却の時間が迫る中、喜屋武岬に移動してしばらく海を眺めて、那覇に引き返す。

 今日はすごい夕焼けで、燃えてるみたいだね、と皆が口々に言い、写真に収めている。車内には僕のプレイリストで音楽が流れている。ずっと郁子さんの歌声が流れている。皆が今ツアーしている作品も、音楽を担当しているのは郁子さんだ。「青い闇をまっさかさまにおちてゆく流れ星を知っている」を聴きながら走り、ああ、このプレイリストだと、次はたしか「いきのこり●ぼくら」だと思う。それが流れ始めると、助手席にいたK.Yさんが「死んだ人が生き返って歌い始めたみたい」とつぶやく。「青い闇」が舞台で流れたシーンは、市子さんが演じるえっちゃんが自ら命を絶つ場面だ。それに続けて何曲か市子さんの曲を聴いているうちに、レンタカーを返す店に到着する。

 車を返却して、駅まで歩く。N.Aさんと隣になる。橋本さんと会うの、久しぶりだとNさんが言う。そうですね、いつぶりですかね。イタリアぶりだよ。えっ、そんなに前になります? だって私、橋本さんの『手紙』を読んで、私も橋本さんにお手紙を書きたいと思いながらまだ書けてなくて、それ以来だから、イタリアぶりだよとNさんが言う。それは4ヶ月前のことで、ずいぶん時間が経ったなという気がする。旭橋駅からゆいレールに乗り、20時半に皆で「うりずん」に入り、乾杯。いつもはひとりで飲んでいるけれど、今日は皆がそこにいて、不思議であるのと同時に嬉しくなる。「ここはまず、橋本さんのおすすめを食べるべきじゃない?」とFさんに言われて、いつもはひとりでくるから、あれこれ注文したことはないんですけど、ここの名物はドゥル天ですと伝える。これがとても好評で、ターンムの唐揚げも追加で注文することになる。皆は旅行で来ているわけではなく、明日の朝から仕事が控えているので、22時には会計を済ませて店を出る。残った4人で近くの屋台のような店に入り、沖縄そばを啜る。Fさんだけソーキそばを注文したのだが、食べる前から「ちょっとこれ、食べてもらっていい?」とJさんの器にソーキを移している。この時間をいろんな土地で過ごしてきたなあと、少し感慨深くなる。少し歩いたところで皆と別れて、缶ビールを飲みながら宿まで歩いた。