8月28日

 7時半に起きる。9時半、知人と一緒にアパートを出て、千代田線に乗る。降りる駅が異なるので、それぞれ違う車両に乗り込んだ。千代田線から日比谷線に乗り換えて、東銀座に出る。10時ちょうどに約束の場所にたどり着き、M山さんと新しい媒体に向けた打ち合わせ。概要を聞かせていただき、「まずは橋本君に声をかけようと思って」と嬉しいことを言ってくださる。これからは書籍にまとめられるような仕事を増やしていかないとと思っているところだったので、僕にできることは限られているのかなと思っていたけれど、話しているとあれこれアイディアが浮かんでくる。10年前、M山さんがリニューアル新創刊することになった雑誌にライターとして関わることになったことを思い出す。リニューアルに向けた編集会議にも呼んでもらったけど、僕はこれといったアイディアを出すこともできなくて、徐々に編集会議は欠席させてもらって、依頼してもらった仕事を受ける形になったことを思い出す。あれから10年以上経った。あるアイディアを話すと、「それ、いいね。橋本節って感じがするね」とM山さんに言ってもらえて嬉しくなる。

 正午頃に打ち合わせは終了。せっかく東銀座にいるのだからと、「矢場とん」で味噌かつを食べることにする。歩いていると「ナイルレストラン」に行列が出来ており、「矢場とん」も並ばないと入れないかもなと思っていたのだが、到着してみると空いている。席に着くと、水を運んできた店員さんに「水素水です」と言われてギョッとする。東京に進出したばかりの頃に訪れた記憶があるけれど、ずいぶん時間が経ったのだなと感じる。ほどなくして鉄板味噌かつが運ばれてくる。3切れほど食べたところでわりと満腹になり、悲しい気持ち。とんかつ一枚を平らげられなくなる日がくるのだろうかと思いながら、気合いで食べきった。

 暗い気持ちで歩いていると、沖縄のアンテナショップの前に出た。明日から沖縄に出かけるところだけれど、どんな商品が並んでいるのか確認しようと、少しだけ立ち寄る。さらに歩いているとLOFTの看板が見えたので、なんとなく立ち寄り、そうだリュックがぼろぼろで恥ずかしい思いをしてるのだったと思い出し、5分ほど物色して購入を決める。今使っているリュックより一回り小さいけれど、ポケットがいくつもあって収納も分かれているので、整理しやすそうだ。会計を済ませると、そのまま背負って歩き出す。リュックと、あとは時計だ。前に使っていたニクソンの時計は気に入っていたのだけれども、しばらく前に壊れてしまっていた。LOFTでもニクソンの時計を売っているけれど、2万円以上する。リュックも2万円近くしたこともあり、「2万円の時計を身に着ける俺か?」という疑問が消せず、有楽町のビックカメラに移動して、カシオの千円のデジタル時計を買い求める。そんな値段の商品なのに、わざわざベルトを調整してくれて恐縮する。

 何度も時計を確認しながら千駄木まで帰ってくる。帰宅後、テープ起こしをしているうちに日が暮れる。夜は豆腐ハンバーグを作り、知人の帰りを待って晩酌。バラエティを数本観たあとに、少し前に再放送された『写真家 ユージン・スミスの戦争~タラワ・サイパン・沖縄~』を観た。知人はユージン・スミスの名前を知らなかったけれど、彼が撮った写真には見覚えがあるらしかった。戦場を写した写真にこんな感想を浮かべるのは不適切かもしれないけれど、その美しさに驚かされる。まるでスタジオで写したかのように、構図もピントも鮮やかだ。ユージン・スミスは従軍カメラマンとして太平洋戦争を撮影していて、軍の検閲によって当時は公開できなかった写真もあるという。だが、どの写真がどのように検閲されたのか、すべて記録が残っていることに驚く。キリスト教の国であることと無縁ではないのだろうけれど、戦後すぐに資料が燃やされた日本とはどこまでも違っている。