9月16日

 8時過ぎに起きる。午前中は10月のスケジュールを考えて過ごす。前回沖縄を訪れたのは8月中旬で、今月のうちに出かけるつもりでいたけれど、金銭的に難しそうである。今月末にはRKSPで連載が始まることだし、行っていけないことはないけれど、連載の第2回までは取材済みで、今足を運んだとしてもやれることは少ないだろう。沖縄にはアーケードの撤去が始まる頃に出かけることにして、10月上旬にはやはり京都エクスペリメントに行かなければと思い直す。演劇作品は足を運ばなければ観ることができず、観なければ何も書くことができないままになってしまう。

 しかし、京都は遠い。青春18きっぷの時期であれば「気軽に行ける」と思えるのに、それ以外の時期だと遠く感じる。しかし、夜行バスに乗る気力は湧いてこず、交通手段を調べてみると、昼行便があると知る。京都くらい遠くなると昼行便はないものだとばかり思っていた。しかも、夜行より割安だ。夜行であれば移動を睡眠に充てられるのに、昼行だと一日移動で潰れてしまうからなのだろう。でも、コンセントもついているようだし、車内でパソコンを広げて仕事をしていればいいので、行きは高速バスに乗り、観劇し、終電の新幹線で帰るプランを立てる。

 昼、昨日のすき焼きの残りと、おでんが食卓に並んだ。僕が帰省した日から冷蔵庫にセブンイレブンの容器が入っていた。そちらは食べず、すき焼きの残りをおかずにごはんを二膳。午後は那覇で開催したトークイベントを、今更ながらテープ起こしする。作業を進めながら、10月末に中国まで公演に帯同する日々のことを思い浮かべる。そのうちに、そこに出演するN.Aさんのことを思い出し、それと同時にバターケーキのことが思い浮かんでくる。Nさんが死ぬ前に食べたいと言っていたバターケーキは、彼女のひいおばあちゃんの家がある岡山に本社があるケーキ屋さんのバターケーキで、そのお店は僕の郷里にもあるのだ。そこまで思い出したところで、今日は敬老の日だったと気づく。いそいそと車で出かけ、バターケーキを買ってくる。

 18時半に夕食。カレイの煮付け。食後、隣の祖母宅に行き、バターケーキを食べる。父が写真を撮ろうとするのを頑なに断る。祖母は記憶がおぼろげになっていて、ケーキを切り分けているあいだ、やっぱりお友達はいいねえ、と言っている。母が切り分けたケーキを一口食べると、「これとおんなじではないんじゃろうけど、こんとなのを食べよったような気がするよ」と祖母が言う。何度かバターケーキを買ってきて一緒に食べたことがあるから、それが記憶のどこかに残っているのだろう。あっという間に平らげると、「また来年もきてください。私が生きとったらね」とあっけらかんと口にする。それを聞いた母が、何を言いよんね、そんとに早くは行かれやしません、と返す。