3月11日

 6時過ぎに目を覚ます。朝、コーヒーを淹れようと思ってお湯を沸かしていると、コーヒーの豆を切らしていることに気づく。今日は諦めるか。そう思いかけたところで、坪内さんのお通夜に出かけた折にいただいた香典返しの中に、一杯用のドリップコーヒーのセットが入っていたことを思い出す。それを淹れながら、おそらく最後になるであろう、坪内さんへの追悼文はもう書けたような気持ちになる。9時近くになって起きてきた知人は、玄関にぶら下げてある部屋の鍵を不思議そうに見ている。摩耶観光ホテルって何、201号室は201号室だけど、ここは摩耶観光ホテルじゃなくて××××ビルやけど、と困った様子で言う。

 今日、出先で目にするかもしれないテレビ番組をあとで見返せるように、13時から20時頃までの全テレビ局を録画予約しておく。13時過ぎにアパートを出て――ここから先の行動はすべて追悼文に書く。