4月5日

 8時過ぎ、知人が目を覚ましてチャンネルをTBSに変える。「『サンデーモーニング』じゃないと、日曜日って感じがしないので」。そう言って、知人は再び眠りにつく。番組が終わるまで目を覚ますことなく、眠り続けていた。「それならチャンネルを変えなくたっていいじゃないか」と言われればそれまでだが、知人の気持ちは少しわかる。いつも聴いている声と音の中で眠っていたいのだろう。

 コーヒーを淹れて、いくつかメールを書く。旧グッゲンハイム邸のM.Aさんにもメールを送る。3月7日にお会いしたとき、「取材でこっちにくるときに、延泊したいと思ったら、うちのゲストハウス使ってくれていいんで」と言ってくださっていた。状況が状況なので、ストレートにはお願いしづらいけれど、「もし、少しでも抵抗感があるようなら断ってくださって構いませんので」と前置きした上で、泊めてもらうことは可能かとメールで尋ねる。早々に返信があり、「無問題」とある。これで来週の予定が決まった。状況が大幅に変わらない限り、3月8日に旧グッゲンハイム邸に泊まり、10日に取材をして、帰京する。こうして書いてみると、妙に心細い気持ちになる。

 昼は知人が作る鯖缶とトマトのパスタを食べる。午後、原稿を書く。日が暮れる頃になって、6400字までたどり着く。ここからもう一山あるが、今日書こうとしても荒くなってしまうだろう。今日はもう店じまいにする。それよりも、ピザだ。昨日、ピザーラとドミノピザのチラシが投函されていた。僕はピザ屋のチラシが好きで、2年半くらい収集し続けている。投函されていたチラシをしげしげと眺めていると、「Lサイズ全品半額」の文字が見えた。それを目にしたときから、日曜の晩はピザを頼もうと決めていた。

 まだ仕事を続けている知人の隣で、どれにしようかなあ、やっぱりクアトロだよねえ、でもこのクアトロだと炭火焼チキテリが入ってるねえ、チキテリは要らないんだよなあ――と、チラシを眺めながらずっとぶつくさ言い続ける。なんでそんなにピザが好きなのと、知人はなかば呆れている。ピザが好きというよりも、宅配ピザの特別感が好きなのだ。迷った挙句に、クワトロ・3ハッピー(シェフの気まぐれ野菜スペシャル/ギガ・ミート/シーフード・スペシャル/高麗カルビ)をアプリで注文。注文したあと、アプリの画面に表示されるGPSを見つめる。配達員が今どこにいるか、GPSで表示される。今回は初めて2軒まとめて配達されており、少し遠回りしてからうちにやってくる過程を、GPSで見つめ続ける。

 こうしてピザを注文することになったのは、さっきも書いた通り、チラシが投函されていたからだ。チラシといえば、昨日と今日、投函されていたチラシがある。それは宗教に勧誘するチラシだ。それぞれ別の団体のチラシなのだが、いずれも霊波が云々と書かれており、信者の体験談がいくつか書かれてある。そこに共通するのは、「白血病が治った」というエピソードが書かれていることだ。こうした状況を「好機だ」と捉えている人がいるのだなと思う。けしからんと憤っているわけではなく、明日には自分が感染するかもしれないという状況に置かれていても、「信者を増やせるはずだ」という視点で情勢を見つめている目があるのだと、ハッとさせられたのだった。