5月3日

 8時過ぎに起きて、冷凍庫から食パンを取り出す。そのほうが鮮度を保てるというので、冷凍庫に入れておいたのだが、横着して小分けにしなかったせいで、スライスされたパンがくっついている。次からはちゃんと一枚ずつラップにくるんで冷凍しよう。無理やり引っ剥がし、グリルで焼きながらコーヒーを淹れる。知人が厚めにバターを切っているのを見て、こっちにも薄めにバターをと切ってもらう。『サンデーモーニング』と何の感慨もなく眺めながら朝食をとる。プロ野球選手がピッチング練習する様子が流れている。選手たちもグラウンドに入るまえに手を消毒したりしているのだろうか。「経済活動を少しずつ再開させなければ」という話が聞こえ始めているけれど、生活を再開するにはたっぷりとした量の消毒液が行き渡らなければ不安だ。

 原稿は昨日で書き終えてしまったので、なんだかぽっかりした気持ち。締め切りの迫っていない原稿はあるけれど、すぐに取り掛かる気にもなれなかった。こういう時間があるときにと、部屋とパソコン内の整理整頓をして過ごすことにする。テレビではいつのまにか『サンデージャポン』が始まっている。岡村隆史の話をしていたはずが、リモート出演中のテリー伊藤が割って入り、築地の売り上げが何割減だ、海外からの観光客もすぐには戻らないから大変だとコメントする。一体この人は何を言っているのだろう、と作業を止めてしまうのでチャンネルを変えた。昼、「インド富士子」のフィッシュカレーを食べながら、『スクール革命!』を眺める。クイズをまじめに観る。月の直径と、アメリカ横断、どちらが長いか。それはさすがに月の直径やろ、半径ならともかく、星やろ星、と言っていると、正解はアメリカ横断で、まんまと「えー!」と声をあげる。

 コートやセーターといった冬物を、クリーニング店に出しにゆく。9月上旬までの長期お預かりサービス。午後はパソコンの中の写真を整理する。写真を撮るとき、とにかくたくさん撮っておくので、同じようなカットが何枚もある。そのままだとハードディスクを圧迫してしまうので、これだ、という写真だけ残しておく。そして、ちゃんとフォルダごとに整理してゆく。この10年以上、撮りっぱなしでフォルダごとに整理してこなかったので、「あの写真、いつ撮ったっけ?」と思い出そうとしても、すぐには見つけられなくなってしまっている。ただ、それを全部整理しようと思うと、一週間以上かかってしまいそうだ。そんなにデータの整理ばかりやっていられるだろうかと、まっさらだった5月のカレンダーに、原稿書きや資料読みのスケジュールを書き込んでゆく。思ったほどのんびり過ごす時間はなさそうだ。

 本棚を整理しながら、企画「R」に向けて読んでおくべき本を、目につきやすい位置に並べ替える。これは今月読んでおくべきもの、これは来月に読みたいもの。これは4月の課題図書だったから後ろに下げてしまおう――そう思って『樋口一葉小説集』をどかそうとしたところで、やっぱり「十三夜」にも触れておきたいと思い直し、昨日送ったばかりの原稿に加筆する。1時間ほどで書き終えて、メールで送信し直す。19時、知人がいちから作った麻婆豆腐をツマミに、晩酌。知人が観たいといった『エイミー』を観た。知人はレディー・ガガエイミー・ワインハウスを演じた映画と間違えていたようだが、それでも興味深く観る。音楽のドキュメンタリーをと、続けて『フェスティバル・エクスプレス』を観た。まだ幸福な時代だ。ジャニス・ジョップリンに圧倒される。

 寝る前にケータイを確認すると、Uさんからメールが届いていた。夕方に「電話で取材させてもらえませんか」とメールを送っていたのだが、「喜んでお受けします」とあり、嬉しくなる。連載のための取材ではあるけれど、今、話をしたいと思っていたひとりはUさんだった。メールに書かれていた言葉から、前回沖縄を訪れたときのことを思い出す。あの日は5人で車で移動しており、用事を終えたところで、皆で空港を目指すことになっていた。ただ、ぼくは途中で車をおろしてもらって、Uさんのお店に立ち寄った。そこで少し立ち話をして、また来月、と挨拶をして空港へと急いだのだった。あれから一ヶ月半しか経っていないのに、ずいぶん遠いところまできてしまった。