5月14日

 7時半に目を覚ます。しばらくクロノトリガーで遊んで、コーヒーを淹れ、パンを焼く。あとから起きてきた知人がゴミを出しに行ったものの、ゴミ袋を手にしたまま帰ってくる。最近、ゴミの収集時間が早くなってしまった。8時半に回収されてしまうというのは、われわれには早過ぎる。「やっぱりもう、寝る前に出しとくしかない」と知人がぼやく。午前中はキッチンの換気扇のフィルターを外し、洗剤で油を落としていく。ここを掃除しなければと思い立ったのは、昨日のお昼だ。

 日記に書きそびれていたけれど、汗をかきながら扇風機を設置したことを反省し、今の時期にとエアコンのフィルター掃除に取り掛かった。エアコンのフィルターに詰まったホコリは、いつも風呂場でシャワーをかけて流し、排水溝に溜まったホコリをさらってゴミ袋に入れている。居間のエアコンのフィルターにシャワーを当てると、ぼろんとホコリが流れてゆく。続けて、ダイニングキッチンのエアコンのフィルターにシャワーを当てると、ホコリはほとんど流れ落ちなかった。え、どう2いうことと触ってみると、フィルターがべとべとしている。そうか、ダイニングキッチンにあるエアコンだから、部屋に流れる空気に油分が混じっていて、それがフィルターについてしまっているのかと気づく。今の場所に越すまではワンルームにしか暮らしたことがなかったので(そして料理をする機会も今に比べると少なかったので)キッチンのエアコンに油汚れが生じるのだと、考えてみたこともなかった。そして、引っ越して2年半経ってようやくそのことに気づくということは、その間フィルターの掃除をしてこなかったということかと反省する。

 水流では汚れは落とせず、キッチンからジョイを持ってきて、丁寧に指先でこすりながら油汚れを落としたのが、昨日のお昼のこと。あんなふうにエアコンのフィルターに油汚れが残ってしまうのは、換気扇の性能が落ちてしまっているのではと思って、こちらもしばらく掃除をしていなかった換気扇のフィルターを掃除することにしたのだ。油汚れ用のマジックリンをかけ、しばらく放置し、流してみる。それだけでは目詰まりが取りきれず、たわしでこする。それを何度か繰り返す。これではほんとに「焼肉はしもと」だなと思いながら掃除を終える頃には、もうお昼時になっている。

 昼はカレーライスを作って平らげる。午後、『ごろごろ、神戸。』と『神戸・続神戸』を本棚から取り出して、付箋が貼ってある箇所を読み返す。ぼんやり考え事をしているうちに、ふと、柴崎友香さんが蔦屋書店のサイトで「いま、これ読んでる」として『ごろごろ、神戸。』、『市場界隈』、『悲しくてかっこいい人』、『夢見る帝国図書館』を挙げてくださっていたことを思い出す。それに最初に気づいたのは何日か前に、晩酌をしながらプロ野球チップスを食べているときだった。iPhoneからリンクをクリックすると、『ごろごろ、神戸。』と『市場界隈』が横並びに表示されて、おお、と見入っていると、それに気づいた知人が「この並び、プロ野球チップス友達じゃん」と言う。いや、プロ野球チップスはこちらが勝手に「ああ、それいいな」とのっかっているだけだし、「友達」という言葉は、同じ時期にプロ野球チップスを食べているなんて部分を指して言うものではないと、やけにくどくど言い返していたことも同時に思い出される。

 日記に書きそびれたことを思い出すと、それにつられるのか、別の記憶もよみがえってくることがある。しばらく前にネットで古書をあれこれ注文したのだが、そのうちの一冊は「西村文生堂」に注文した。いつだったか、A野さんと一緒に自由が丘で飲んだときに立ち寄ったおぼえがある。店の雰囲気を思い浮かべながら開封すると、本は新聞紙に包まれていた。正確に書けば、雨に濡れないようにビニール袋に梱包した上に、新聞紙でくるみ、封筒に入れられていた。どうして新聞紙でくるむという一手間を挟んでいるのだろう。その一手間に人が滲んでいるような気がして、新聞紙を広げてみる。それは5月4日の朝日新聞朝刊で、阪神支局襲撃33年の特集記事が掲載されていた。

 夕方、M&GのHさんからLINEで連絡が届く。今後の活動について直接会って話したい、とある。今後どうなるのか、どういう判断を下すのかずっと気がかりで、LINEで問い合わせたこともあった。どういう判断が下されたのかは一文字も書かれていなかったけれど、メールなどで報告するのではなく、Fさんが直接自分の口から伝えたいと思っているのだろう。その意図を汲んで、いつでも空いてますと返信する。本当であれば、今日は稽古初日となるはずだった日だ。琉球新報のLINEニュースから速報が届く。「全島エイサー中止」という文字がiPhoneの上のあたりに表示され、消えてゆく。2015年の夏、ちゃたんニライセンターで『cocoon』を観たあと、隣のグラウンドでエイサーを観た夕方の感触を思い浮かべる。

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