6月26日

 4時半に目を覚ます。5時、アラームを止めて、シャワーを浴びる。6時にアパートを出て、羽田空港へ。7時に南ウィングの時計台で待ち合わせ。今日から『cw』の取材だ。こないだの沖縄滞在と違って、もしもぼくが感染していたら編集者の方が行動経路を把握しているので、細かくは書き残さない(取材だから、細かく書くのは憚られるというのもあるけれど)。だから、印象に残ったことだけを書き出す。

 飛行機を乗り継いで向かった先は石垣島だ。同じく『cw』の取材で訪れて以来、二度目だ。到着ロビーに出ると、チラシが配布されていた。「石垣市からのお願い」と書かれたその紙には、「感染対策」の方法がイラストつきで書かれている。「マスクを着用しエチケットを守りましょう」「手指の消毒をこまめに行いましょう」「部屋に帰ったら手洗い・うがいを行いましょう」「滞在中は、毎日体温チェックをし、体調不良時の外出は控えましょう」「三密(密接・密集・密閉)を回避しましょう」「宿泊施設、交通機関、店舗等事業者による感染防止ガイドラインを守りましょう」と、この6項目が挙げられている。さすがにしっかり警戒しているなと感心していたら、島内で観光客――その多くはグループ客だった――がマスクを外して談笑している風景を何度となく目にした。

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 この日は竹富島を訪れた。竹富島を訪れるのは初めてだ。大学生の頃、ドド子さんが竹富島の魅力を語っているのを聞いたことがあるけれど、自分が訪れる日はやってこないだろうと思っていた。大学生の頃から、自分がどこかに出かけるとすれば、ライブやイベントのためか、誰かに会いにいくか、あとは帰省のときくらいのもので、「旅に出よう」と思ったことは一度もなかった。だからぼくの中で、竹富島はもっとも縁遠い世界の一つだと思っていた。今のようにちょこちょこ沖縄に足を運ぶようになってからは、竹富島は観光客で賑わっているイメージが強く、足を運ぼうとは思わなかった。その場所にいるというのが、とても不思議なことに感じられた。しかも、コロナの影響で、観光客の数はまだずいぶん限られていた。編集者のTさんは、当然ながら取材で頻繁に訪れていることもあり、「こんなに人がいない竹富島は久しぶり」と話していた。いつもはレンタサイクルが行き交い、水牛車はピストン輸送を繰り返し、観光客が流れ作業のように竹富島を「観光」してゆく風景が広がっていたのだという。今日の風景は、昔に戻ったみたいだとも語っていた。コロナの影響で目にすることができた風景を焼き付けるように、取材後は島内をそぞろ歩き、取材先に引き返し、缶ビールを買って中庭でぼんやり過ごした。名前は知らないけれど、いろんな花が植えられていて、見事に咲き誇っている。こんな贅沢な時間を今後味わうことはあるのだろうか?

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 最終便で石垣に引き返し、シャワーを浴びたのち、飲みに出かけた。1軒目で飲んだあと、ひとりで夜の街に繰り出した。行き先は決まっていた。前回訪れた「やふぁやふぁ」という居酒屋だ。あのとき、カウンター越しに目にした大将の仕事ぶりと、八重山そばの茶碗蒸しがとても印象的だったので、いつか再訪したいと思っていたのだ。ちょうど〆の料理が欲しかったこともあり、お店に向かってみると、まだぎりぎり営業していたのでカウンターに座らせてもらう。カウンターはビニールカーテンで遮られていた。眼鏡を外した状態で見ているように、少しぼやけているけれど、大将の姿が見える。そばを啜り、満足したところで宿に引き返す。