7月24日

 つけっぱなしのテレビで『羽鳥慎一モーニングショー』が流れている。東名高速道路を走りながら混雑ぶりを中継している。スタジオにいる羽鳥慎一が「東京ナンバーはどうですか?」と声をかける。何を言っているんだお前は。こうして不安を煽りながら、一方で「ナンバー狩り」と報じている。今の時代に情報番組の現場にいる人たちの頭の中は、どんなことになっているのだろう。昨日から「GoToトラベル」という謎のキャンペーンが始まった。それを受けて、「今はまだ旅行は控えて、自宅で過ごします」というスタンスのツイートを投稿する人をちらほら見かけた。それは一見すると良識的なツイートに見えるのだろうけれど、そうしたつぶやきによって、キャンペーンだけでなく移動に白い目が向けられる。問題は「感染対策が施されているか否か」に尽きるはずだ。密な状況を避け、飛沫対策を施し、手洗いを徹底して無闇に物に触れないように過ごすぶんには、近所のスーパーに出かけるのであれ、職場に出かけるのであれ、県境をまたいだ先に出かけるのであれ、リスクは同じであるはずだ。そこで「今はまだ旅行は控えて、自宅で過ごします」というツイートが連なることで、移動に対して白い目を向ける空気が醸成されてゆく。その空気を生み出している自覚はあるのだろうか。

 昼は知人にサッポロ一番塩らーめんを作ってもらう。具材は豚バラ肉、もやし、それにニラ。ぼくが雑に作るときよりおいしく、どうすればこんなふうに肉が柔らかく仕上がるのだろう(「どうすれば」なんて言うまでもなく、肉を炒め過ぎているのだろうけれど)。午後、来月の企画「R」に向け、本棚を並び替え、読むべき本をピックアップしておく。7月14日あたりからずっと企画「R」のことを考えていて、まだ7月中旬ぐらいのつもりでいたけれど、もう7月も終わりが近づいている。7月下旬とは思えない天気が続いているせいもあるだろう。8月上旬には『AMKR手帖』の取材があるはずだったけど、この状況ではどうなるのかわからない。ただ、8月のうちに神戸に行っておきたいなと思う。今年度で「なくなる」ことになっている須磨海浜水族園は、夏には夜まで営業時間を延長しているという。もうすぐなくなってしまうとわかっているものがあって(いやすべての場所はいずれなくなってしまうけれど)、興味を持っているのに何だかんだと理由をつけて足を運ばないままになってしまって、後になって「あのとき行っておけばよかったな」と振り返るのは絶対に嫌なので、取材がなくなったとしても神戸には出かけておきたいところ。取材とは関係なく滞在することになるとしたら、普段とは違うエリアに宿泊したいなと、じゃらんで検索して過ごす。

 17時過ぎに知人と一緒に散歩に出る。よみせ通りは今日もなかなかの賑わいだ。「越後屋本店」で生ビールを買って、立ち飲み。通りを行き交う人が多くて、はらはらする。1杯だけ飲んで店をあとにする。ドラッグストアにハンドソープ詰め替え用が並んでいたので買っておく。一家族様一点限りと注意書きがあった。連休だというのに天気も悪く、知人がしょんぼりしているので、今日は焼き肉にする。スーパーマーケットで何種類か肉を買って、19時、キッチンで知人と立ち食い焼き肉をする。満腹になったところで居間に移動し、録画した番組をあれこれ観る。今夜放送された『不要不急の銀河』(NHK)は、又吉直樹の脚本によるドラマと、対策を施しながらドラマの撮影にとりかかるドキュメントパートとに分かれている。ドラマの舞台となるのはスナックで、ドキュメントパートでは実際にスナックを経営するところの元を訪れてもいる。番組全体を通して、どこかいやな感じが残る。この状況の中で「不要不急」だと扱いを受けているスナックという場所にも、その場所を切実に必要にしている人はいるし、その場所を切り盛りしてきた家族がいる――それはまったくの正論だけれども、ネタとして消費している感じが最後まで拭えなかった(もちろんこの違和感は、自分の仕事にも跳ね返ってくる)。スナックを切り盛りする人たちを描く上でも「家族」が強調され、そしてスナックを切り盛りする夫が骨折している理由にも「家族」が絡んでいて、そこにも物足りなさがある。