8月17日

  10時近くまで眠ってしまう。知人も慌てて起き出して、ゴミを捨てにいく。昼、近所の八百屋へ。サッポロ一番の「塩とんこつ」というのが並んでいる。こないだの「旨辛」に続き新商品かと思って検索してみると、「旨辛」も「塩とんこつ」も、ぼくがよく行くスーパーに並んでいなかっただけで、何年も前から販売されているようだ。とんこつだと、具材は何がいいだろう。とりあえずもやしをカゴに入れ、青ネギは家にあったはずだから、豚コマとごまを買って帰る。袋を開けてみると、ごまは袋に入っていた。「塩とんこつ」とはいえ、「サッポロ一番の塩」なのだからそれはそうかと反省する。青ネギを刻み、ニンニクと豚コマを炒め、もやしは別で炒めて麺にのせる。なかなかウマイ。しかし、前々から気づいていたけれど、ラーメンにトッピングする肉に対する意識が低く、しっかり火を通したせいでぼそぼそしている。そもそもこのラーメンのトッピングに肉が必要なのかというところから見直す必要があるかもしれない。

 午後は『AMKR手帖』の原稿を書く。こんなに暑い日が続くと、夏らしい音が聴きたいなとアップルミュージックを検索していると、「ファンク」という項目が出てきて、関連アーティストの中にCAMEOという名前が見えたので、それを聴く。ぼくは音楽にまったく詳しくないけれど、15年くらい前にZAZEN BOYSのライブ会場で開演前に流れる音楽のプレイリストがどこかで記事になっていて、そこでCAMEOという名前を見かけ、そのアルバムだけ持っていたことがある。あのアルバムを今どこにやってしまったのかはわからないけれど、アップルミュージックでCAMEOを聴く。原稿は16時過ぎに書き終わった。原稿を終わらせるとき、読後感として感慨が残るようにと思うと、どこかエモーショナルになる(たぶん今の時代の「エモさ」とはズレているのだろうけれど)。自分で読み返しても少し苦しく、もじもじしていると、それを察した知人が「エモ芸人」と言う。

 16時半、知人はオンライン会議をやるというので、ぼくは散歩に出る。企画「R」の原稿を練りながら歩き、「往来堂書店」で『フリースタイル』を手にとり、亀和田武さんの原稿に目を通す。談笑する声が聴こえ、ぴくりとそちらに顔を向ける。高齢の男女が本を手に語り合っている。こういう状況でなくとも、本屋なんてひとりで過ごす場所だろうと思っているので、思わず顔を向けてしまう。それで気づいたのだが、男性のほうはマスクをしていなかった。そのままじっと視線を向けていると、視線に気づいた女性のほうはそそくさと奥に移動していく。男性は、マスクをしていないというか、外して片耳にひっかけた状態だ。外なら暑くてマスクをしていられないというのもわかるし、別に店内でだってしゃべらないのであればそれでいいけれど、どうして外した状態で駄弁っていたのだろう。この暑さだから、お店も扉を閉じて冷房を効かせてあるというのに。ちょっと信じられないなと視線を向け続けていると、その男性は口元を緩め、「やれやれ」と言わんばかりに、ふうーーーー、と大きくため息をつく。何をこっちに向かって息ふきかけてきとんじゃと視線を向け続けていると、その男性も別の棚に移動してゆく。

 スーパーマーケットで買い物をしてアパートに戻り、そういえばと実家に電話。原稿を書く上で花火の記憶をさぐっていたので、小さい頃にどこでどんなふうに花火をしていたか、花火大会に出かけたことはあったかと確認する。これで原稿が書けそうだ。コピー用紙に手書きで原稿を書きながら、お昼に検索して出てきたファンカデリックを聴く。集中力が途切れ、冷蔵庫からビールを取り出し、音楽に合わせて小躍りすると、知人も席を立って小躍りする。ふたりでしばらく妙ちくりんな踊りを踊る。19時、サバの開きを焼き、枝豆を茹で、晩酌。録画したNHKスペシャル『アウシュビッツ 死者たちの告白』を観たのち、そうだあのドラマでアウシュヴィッツを訪れるシーンがあったんだと思い出し、フジテレビオンデマンドで『白い巨塔』を観始める。東教授の総回診のシーンで、「うわー、懐かしい」と知人が言う。このドラマが放送されたころ、「ちょっとちょっと、総回診が出たんじゃないん」と知人が言うと、母親が(総回診する東教授よろしく)スタスタと歩いてくる――という遊びをやっていたのだという。家だけでなく、スーパーでもやっていたそうだ。3話の途中まで観たところで、力尽きて眠ってしまう。