マーム2014

マーム同行記35日目(パリ3日目)

この日はお昼頃から散策に出かけることになった。聡子さんが乗るはずだった飛行機に関してトラブルがあったので、結局、三人ともパリを経つのは明日ということになった。街を散策できるのは今日が最後なので、せっかくだからパーッと美味しいものでも食べに…

マーム同行記34日目(パリ2日目)

9時にロビーで待ち合わせて、さっそく街を歩く。朝のモンマルトルは静かだ。ジョギングする男の足音と息づかいだけが、時々近づいてはまた遠ざかっていく。今日もまた、まずはサクレ・クール寺院を経由して、パリの街並みを一望してから出発することになった…

マーム同行記33日目(パリ1日目)

ふと窓の外を見ると、真っ白な雪でコーティングされた山が見えた。山はずっと向こうまで連なっていて、飛行機は移動を続いているはずなのに、その山々が途切れることはなかった。これがきっとアルプスなのだろう。 僕は窓の外に広がるアルプスを眺めながら、…

メッシーナ公演3日目ーーツアー最終日

今日はツアー最終日だ。今日もホテルから劇場まではクルマが手配されていたけれど、それに乗ったのは荻原さん、聡子さん、波佐谷さん、藤田さん、門田さん、それに僕の6人だけだ。残りの皆は、散歩に出かけたり、お土産を買ったりするべく、自分で劇場に向か…

メッシーナ公演2日目ーー初の昼夜2公演

11時、ロビーに集合して皆でルイーサを見送る。ルイーサとは、これで本当にお別れだ。 「あなたたちと一緒に過ごせたことを光栄に思っています。本当に、すべて楽しみました。今日と明日、何事もないことを祈っています。頑張ってください。じゃあ、12月の終…

メッシーナ公演1日目――ルイーサとの別れ

14時半、今日もテクニカル・リハーサルが始まった。ツアーも4都市目だけあって、途中で中断することもほぼなく、比較的通し稽古に近い形でつつがなく進められた。藤田さんも「昨日よりは全然良くなっている」と満足そうだ。 「では、本日のテクリハはこれで…

マーム同行記29日目――2つのインタビュー

仕込み2日目となるこの日は、午前中にセッティングが行われて、ランチを挟んで14時からテクニカル・リハーサルが行われた。17時半、予定よりもずいぶん早くリハーサルが終了したあと、2本のインタビューが収録された。 1本は、プロデューサーのコラド氏が手…

マーム同行記28日目

8時45分、ホテルのロビーに集合する。テクニカルチームは1時間前にホテルを出て劇場入りしているので、まだ残っていたのは実子さん以外の役者5人と僕だけだ。皆はiPhoneを覗き込みながら、劇場までの道のりを相談している。 「ホテルを出て、ほとんどまっす…

夜――荻原さんからの手紙(2通目)

0時過ぎまで藤田さんとワインを飲んで、部屋に戻った。そこには、扉の下の隙間から差し込まれた手紙が置かれていた。メッシーナについてすぐ手渡された手紙を読んだとき、「もう1往復だけ文通をしたい」と思って、ホテルに着いたあとで荻原さんに手紙を渡し…

昼――シチリア到着と皆のキャリーバッグ

ロビーでマイクロバスの運転手と合流して、空港の外に出てみる。シチリアの最初の印象は、とても静かな場所だということだった。 「暑いねー」とはやしさんが、本当に暑そうな言い方で口にする。「さっきタンクトップの人がいたよ」 「ほんとに暑いね。ここ…

朝――シチリアへの移動と荻原さんの手紙(1通目)

朝9時、空港に向けて出発する。宿舎を発つクルマの中で、あゆみさんが「バイバーイ」とつぶやいていた。アンコーナ空港に着いたところで、ここまで運転してくれたスタッフの皆とお別れする。実子さんが代表して、4人にプレゼントを手渡した。「ありがとう」…

マーム同行記26日目

朝起きると、町は霧に包まれていた。今日はアンコーナでは1夜限りとなる公演が行われる日だ(だから文通はお休みする)。8時15分に駐車場に集合して、全員一緒に劇場に向かった。 劇場に到着するとまず、映像の仕事のある実子さんをのぞいた役者の5人、それ…

マーム同行記25日目

朝9時、1階に下りていくと、荻原さんと波佐谷さんがキッチンにいた。荻原さんは「今日はここで書こうかな」と言って、ペンと紙を広げている。僕は近くにあるコインランドリーに出かけることにした。波佐谷さんもコインランドリーに出かけてきたらしく、「今…

マーム同行記24日目

朝9時、キッチンにいた荻原さんに部屋の鍵を渡す。皆は二人一部屋で過ごしているけれど、僕だけ一人部屋になっている。今日は集中して手紙を書いてもらうべく、部屋を貸すことにしたのだ。荻原さんが手紙を書いているあいだ、僕はキッチンでオニオンスープを…

マーム同行記23日目

朝8時に起きる。午前中は部屋で日記を書いていた。外に出てみると、荻原さんは庭に並ぶテーブルで手紙を書いていた。ここアンコーナに滞在する4日間、荻原さんと僕は文通をしてみることにしたのだ。 きっかけは、ポンテデーラの夜だった。 「アンコーナにい…

マーム同行記22日目

気づけば電車は海沿いを走っていた。本当に線路のすぐに海岸線がある。海は綺麗な碧色とも言えるけれど、空が曇っているからだろうか、鈍く、重い色をしている。ここはアンコーナという街だ。今日の朝にポンテデーラを出発して、イタリアを西から東に横断し…

マーム同行記21日目

今日は1週間振りのオフだ。ただ、朝9時半に駅で待ち合わせているから、あまりのんびり寝ているわけにもいかない。腕時計を確認すると8時半だ。「ああ、ちょっと急いで支度をしないと」と思ってiPhoneを手にしてみると、そこには7時半と表示されていた。昨日…

マーム同行記20日目

14時、今日も稽古が始まった。今日は冒頭のシーンからではなく、昨日の公演で気になったシーンを返していくことになる。 「昨日はぶっちゃけ、前半がもたついた感じがあるんだよね」と藤田さんは話を始めた。「学校の休み時間のシーンとかも、もっとワーッと…

マーム同行記19日目

13時半、劇場に到着してみると、聡子さんが舞台でストレッチをしていた。実子さんは釣りのシーンを一人で練習している。客席に座っていた波佐谷さんは「まだ9時間もあるのか。既に眠いな」と独り言のようにしてつぶやいている。と、そこに尾野島さんが入って…

マーム同行記18日目

19時を過ぎる頃には、外はすっかり暗くなっていた。今日は祝日だったのか何なのか、劇場の前の道には数百メートルにわたってずうっと屋台が出ていた。トラックを改装した屋台の列。衣服や雑貨を売る屋台は早々に撤収していて、ホットドッグを売る店だけが残…

マーム同行記17日目

朝9時、ホテルを出て劇場に向かった。本当に雲一つない青空が広がっている。心地よい風が吹いている。9時15分に劇場に着いてみると、聡子さんが劇場の上手側にある扉を開けているところだ。今日は仕込みの日だから、皆マスクをしている。しまった、僕も大量…

マーム同行記16日目

8時20分、ホテルを出て駅を目指す。雨の匂いがする。どうやら昨晩雨が降ったらしかった。8時半を少し過ぎた頃に駅に到着すると、もう皆は駅で待っていた。少し空気がぴりついていて、僕が遅れてしまったせいだろうかと所在ない気持ちになる。 「今、良くない…

マーム同行記15日目

今日は移動日だ。朝、少しだけ街を散歩する。メイナの街は、これまであまり歩いていなかった。皆の宿舎と僕のホテルのあいだに墓地があって、皆の宿舎で大富豪をした夜更けの帰り道、奥に置かれたマリア像が赤い光に照らされていたこと。パブロと散歩したと…

マーム同行記14日目

今日は一日オフだけれど、朝8時半にホテルの前に集合する。今日は皆でマッジョーレ湖観光に出かけるのだ。 もちろん、マッジョーレ湖を眺めるだけなら、ここメイナでも可能だ。単に湖を眺めようということではなく――ワークショップに通い始めた初日から、気…

マーム同行記13日目

今日はいよいよ、4日間やってきたワークショップ発表会の日だ。いつもは18時までのワークショップだけれども、発表会は夜になってからということもあり、いつもより1時間遅い11時半にメイナを出発した。13時、今日も皆揃ってアップをして、ワークショップが…

マーム同行記12日目

朝、ホテルの前であゆみさん、実子さんと待ち合わせ。今日は念願かなって、ホテルで飼われている犬のパブロと散歩に出かけるのだ。 散歩に行けると決まったのは、昨日の朝のこと。ホテルで朝食を取っていると、パブロが僕のテーブルに近づいてきた。宿の人が…

マーム同行記11日目

眠っているあいだに、夜鳴きそばの夢を見た。僕がウトウトしているところに、父が「おい、倫史。夜鳴きそばが来とるで。食べに行かんでええんか」と話しかけてくる。遠くでチャルメラが鳴るのが聴こえる。僕はもう眠たくって、食べようかどうか迷いながら、…

マーム同行記10日目

朝8時に起きる。1階のロビーに降りてみると、朝食が並んでいる。クロワッサンと、甘そうなクッキー。僕はカフェ・アメリカーノだけ注文して、同じ方向ばかり見ていた。僕が泊まっているホテルには大きな白い犬がいる。名前はパブロ――パブロ・ピカソの「パブ…

マーム同行記9日目

朝8時、ホテルのロビーに集合すると、ほどなくしてバスがやってくる。8時半に出発の予定だったけれど、送迎バスが意外と大きく、ホテルの前に長時間停めておくことができなそうなので、皆でいそいそと乗り込んだ。8時21分、バスは次の土地に向けて走り出した…

マーム同行記8日目

朝9時、ホテルで聡子さんと待ち合わせ。ホテルは坂の途中にあるので、街を見渡せる場所を探して坂をのぼっていくことにする。予想以上に急な坂を歩きながら、ぽつぽつと話をする。 ――今回、皆とは別にサラエボの街を歩いたりもしたんですか?聡子 皆で歩いた…