『faifai ZINE』のこと

 秋に上演される新作に向けてドキュメントをお願いしたい――そう言われたのは今年の春のことだった。その日、僕は「とりあえず一緒に飲もう」と快快のリーダー・北川陽子さんに誘われて、トーキョーワンダーサイト渋谷にある佐々木文美さんの部屋で皆と飲んでいた。思えば、知人――いや、僕が一緒に暮らしている制作担当・アニーさんからではなく、他の誰かに誘われて快快の皆と飲むのは初めてのことだった。それまではいつも、仕事のときでも遊ぶときでも、アニーさんを通してしか連絡がきたことはなかった。まず北川さんから誘いのメールがきたことに驚いたのを覚えている。

 しばらく飲んだところで、「今日はね、もふにキチンと頼もうって話なの」と文美さんが言った。「もふ」というのは僕のあだ名である。その言葉に、酔っ払っい始めていた僕は急に冷静になって、言葉に詰まりながら「頼むって、な、何を」と言葉を返すと、「そうそう、その『何を?』から綿密にやっていきたいんだよね」と野上絹代さんが言葉を引き継いだ。「これまで、もふとはアニーを介してしかやりとりしてこなかったじゃない? 今回はそこらへんを取っ払って何かをやりたいんだ。密着して何か書くっていうのももふの得意分野だと思うけど、もう一個、もふとガチでやる何かができないかと思ったの」。

 ガチでやる何か――それは一体何だろうと考えながら、僕は毎月トーキョーワンダーサイトへと出かけた。文美さんがそこにレジデンス・アーティストとして滞在していて、毎月オープンスタジオとして成果を発表することになっているらしく、上下が逆さまになっている部屋を作ってみたり、部屋にビーチを再現してみたりする様子を毎月見学したり、8月31日と9月1日に大分県日田市でプレバージョンとして上演された「6畳間ソーキュート社会」を観に出かけたり、吉祥寺「Ongoing」で行われた「6畳間ソーキュート社会直前パフォーマンス」を観に出かけたりもした。

 それらのパフォーマンスを観て文字にする人はいない(はず)だから、その過程を書き記すだけでも、彼らが新作に至るまでをドキュメントすることはできるかもしれない。でも、それでは圧倒的に足りないという気がした。

 日田バージョンの「6畳間ソーキュート社会」を観たとき、それは“彼ら自身”の物語であり、そしてまた“僕”の物語だと思えた。先週渋谷バージョンの通し稽古を観たとき、その感触はさらに強くなった。

 それは別に、彼ら自身をモデルとした物語だからというだけの話ではない。その物語は、今ここで東京に暮らしている、私たちのどうしようもないリアリティから出発している物語だからだ。

 なぜそうした質感の作品になっているのか。その理由の一つは、彼らが集団制作というスタイルを取っているからだと思う。快快が集団制作であるということは、僕が語るまでもなく、その界隈ではよく知られている。でも、その実体は本当に知られているのだろうか? そこに踏み入ってみることをしなければ、「もふとガチでやる何か」という依頼には応えられないと思った。

 それでは、どうすれば集団制作という彼らのあり方をドキュメントできるだろうか? 一つには彼ら全員にまとめてインタビューするという方法もあるだろう。そうすればせいぜい2時間くらいで取材を終わらせることだってできる。快快の内側のノリを伝えることだってできる。でも、はたして座談会を収録することで彼らのやっている集団制作というものを捉えきれるかと言うと、そんなことはないはずだと思った。それはこの半年を観ていたから余計にそう感じたのかもしれない。

 彼らの集団制作は、何も全員で話し合って一つのものにたどり着くというスタイルではなく、まず一人一人違っている人たちがそれぞれ思い思いのことを考えていて、そのバラバラなものの中から何かが浮かび上がってくるというものだ。そこに近づくために、一人一人にインタビューする必要があると僕は思った。

 僕はこの3年、快快の作品はほぼ観てきたし、一緒にお酒も飲んだし、大阪公演にもバンコク公演にも随いて行った。でも、誰かに深く話を聞くということはあまりしてこなかった。「たぶんきっと、この人はこういう人なんだろうな」と思ったことを、「たぶん」のままにしてきた。快快の舞台を観たことのある人にも、そういう人はいるのではないかと僕は思っている。「なんとなく、快快といえばハッピーオーラ集団でしょ」といったふうに。そこからもう一歩踏み込んでみるためにも、一人一人にインタビューしたのである。

 9月28日から10月6日にかけて、それぞれのメンバーに一対一で会って、それぞれ2時間から3時間ずつインタビューをした。僕がそこで聞きたかったのは、彼らの仕事やそれぞれの役割、あるいは新作の内容についてではなかった。いや、もちろんそういった質問もぶつけてはいるのだけど、それだけを訊くインタビューであれば僕がやる必要はないのである。そういうキチンとしたインタビューはもっとうまい人がいくらでもいる。僕がインタビューで触れたかったのは、それぞれがどんな感触の人で、彼らは今どんな場所に立って、どんな未来を観ているのかということだ(なぜなら、そうしたことを元に快快の作品は作られているはずだから)。

 そのインタビューは、7人ぶんをトータルすると2万5千字もの分量にまとまった。このインタビューは、10月18日から3日間、トーキョーワンダーサイト渋谷で上演される快快の新作「6畳間ソーキュート社会」を予約すると、会場で無料でもらえるZINE『faifai ZINE』に収録されている。予約しさえすれば冊子が無料でついてくるのだから、皆予約すればいいと思う。このインタビュー、自分で言うのもどうかと思うけど、相当良いインタビューになっていると思っている。そこには彼らの今と、彼らのイメージする未来がドキュメントされているはずだ。
 

快快「6畳間ソーキュート社会」@トーキョーワンダーサイト渋谷
日時:2013年10月18日(金)、19日(土)、20日(日)
開演時間:18日(金)15:00/ 19:30 19日(土)15:00/ 19:30 20日(日)13:00/ 17:30
※開場は開演の30分前
会場:トーキョーワンダーサイト渋谷(東京都渋谷区神南1-19-8)
入場料:2,500円
公演の詳細と予約はこちらのサイトから→http://faifai.tv/news/faifai/2009/