3月3日

 久しぶりで「新雅」に出かけてみることにした。昼のピークを外して14時過ぎに入店し、まずはビールと餃子を注文する。カリッと焼けていてうまい。ビールをグビリと飲りながら、昨日の公演のことを反芻する。この人が、おかあさんの、いとこ。この人が、そのいとこのお母さん。で、この人が“たぬきのおじちゃん”か。

 店の外に目を遣る。青柳さんが歩いていく。あれ、もう酔っ払ってしまったのかな。通り過ぎた姿を目で追いかけてみる。そのコート、その歩き方はやはり青柳さんだ。

「あ、あおやぎさん」と咄嗟にメールを送る。咄嗟過ぎてわけがわからない。「新雅で食べてたら、青柳さんの後ろ姿を見かけた気がしてメールしてしまいました…すみません」と、追加でメールを送った。

 果たしてそれは青柳さん本人だった。

 餃子を食べ終えたところで、ちょうど他のお客さんはいなくなった。僕は追加でニラそばを注文して、お店の方に話しかけた。

 あの子ははね、あんまりしゃべらない子なの。そう語るのは“たぬきのおじちゃん”だ。いつもね、「あ、いづみが歩いてくる」と思ってみてたらね、ひゅーっと顔を伏せて通り過ぎちゃう子なんだよ。そう“たぬきのおじちゃん”は笑っていた。ここに来てみれば、青柳さんの意外な一面を知ることができるかもしれないと思ったけれど、そんなことはなかった。

 久しぶりで食べたニラそばはうまかった。あんまりうまいので、嬉しくなってチャーハンも平らげて店を出た。