9時に起きて、トーストを食べる。午前、自宅にあるはずなのに見つけられない資料があり、自転車をこいで図書館まで探しにゆく。自宅を出てすぐの場所で、浴衣姿の二人組を見かけた。少し離れた場所でまた見かけた。そういえば今日は七夕だ。しかし、いくら七夕とはいえ、最近の若い人は朝から浴衣で過ごすのだろうか?(しかも平日だというのに?)

 西落合にある図書館で本を見つけ、引用箇所を確認する。帰り道は地図を見ず、自分の方向感覚を頼りに細い道を走ってみる。しばらく進んだところで中井駅に出た。中井って、一体何線だったっけ。駅前の商店街には赤塚不二夫のイラストをあしらった旗があちこちに掲げられている。その風景にまったく見覚えはなかった。不安な気持ちでさらに進んでゆくと、ほどなくして大通りに出た。そこはよく知っている新目白通りだ。僕が迷っていた場所は、自宅から2キロと離れていない場所だ。上京して最初に住んだアパートからだと1キロほどである。もう12年も高田馬場に住んでいるというのに、こんな近くで迷うとは、ちょっと愕然とする。

 お昼に『e』誌1本目の構成を送り、2本目のテープ起こしに取り掛かる。夕方、ひょっとしたら今日は浴衣姿の大学生が大挙して駅前のロータリーにいるのではないかと思い、駅前に出てみる。浴衣姿の女の子が4人ほどいるが、それよりも「ストップ!戦争法案」の幟をはためかせてビラを配っているおじさんとおばさんたちのほうが目立っている。皆、すごい笑顔だ。なんだかその場所にいづらく感じて、さかえ通りの喫茶店に移動する。

 時刻は18時半。窓の向こう、さかえ通りを歩く人は皆きらきらして映る。大学生だろうか、二十歳前後の女の子たちが浴衣姿で通り過ぎてゆく。片手には大きな紙袋を持っているから、授業が終わって着替えたのだろう。クラスメイトかサークル仲間か、隣を歩く男の子と話す表情にはまったく屈託がなかった。羽化したての状態みたいに見える。どこか無防備で、ふとしたことで傷ついてしまいそうにも見えるけれど、そこにきらめきも感じる。学生だけでなく、通りを行き交う人は皆きらきらしている。これから飲みに行くのだろう、とても良い表情だ。いつもは駅近くの風景なんて「歩きづらい」としか思っていなかったけれど、真横から見るとこんなにもまぶしかったのかと驚く。

 芳林堂書店で『新潮』、『すばる』、『群像』を購入し、ひとりで近所の酒場へ。日本酒、冷やしトマト、それにピクルスを注文して、まずは『新潮』に掲載された「水木しげる出征前手記」から読み始める。すごみを感じる。