9時過ぎに起きる。昨日入稿した原稿に修正の必要が出たので、修正版の準備をする。我ながら認識が甘かったと反省しきり。14時過ぎ、校正刷りが届く。修正を反映したテキストをH・Iさんに送り、夕方頃から金麦を飲んだ。18時、記者会見のネット中継を観始める。ここ数年はネット中継されていると知っていたけれど、こうしてリアルタイムで見守るのは初めてだ。ずっと会場だけが映し出されている。知人も職場で中継を観ているようで、「どうなるだろうね」とメールが届く。僕は「たぶんダブル受賞だと思う」と返事をする。19時半より少し前に、受賞作が発表される。獲る違いないと思っていたけれど、まるで自分のことのように嬉しくなる。すぐにコンビニに出かけて一番搾りを買ってきて飲み直す。

 めでたい気持ちで中継を眺めていると、僕にとって兄貴と呼ぶべきM山さんから「橋本君も二次会においでよ」とメールをいただく。ずうずうしいかなと思いながらも、祝いたい気持ちでいっぱいなので、お邪魔することにする。ただ、すぐに出かけても早過ぎるので、しばらくアパートでビールを飲んで、記者会見が始まるのを待った。さすがにメディアの数が多いようだ。テレビの質問があまりにもくだらなくてうんざりする。どうせ明日のワイドショーで、「うちの番組のリポーターが質問を!」みたいなノリで記事にするのだろう。それにしても、どうしてあんなに安直に「メッセージを」と訊ねるのか。

 22時半、銀座へ。そわそわして早く到着してしまった。会場に入ってみると、某誌の記者が数名待ち構えている。アロハみたいなシャツで来てしまった僕は――僕が持っている服で一番めでたい雰囲気だからそれを選んでしまったのだが――「あの、今日は貸り切りで……」と声をかけられてしまう。「いや、あの、編集者のAさんから教わって」と中に入れてもらう。二次会ともなると、きっと大勢の人でごった返すのだろうから、端の端――もう柱の影の影になったような場所で到着を待つ。23時過ぎ、M・Nさんがやってきて、シャンパンで乾杯した。Mさんは全員のもとをまわってグラスを重ねていた。しかし、もっと編集者や作家の方が大勢で囲むことになるのかと思っていたけれど、そんなことはなく、ほぼ見知った顔が多くてホッとした。その規模が、とてもMさんらしいと僕は感じた。

 それでも尻込みして一番遠い席に座っていたのだけれども、1時間ほど経ったところでM山さんに促され、Mさんの隣に座ると、同じテーブルを囲んでいた人たちに僕のことを紹介してくれる。そのテーブルにいる3人はMさんと同業の方だ。そのうちのひとりに、「Mさんとはどういうきっかけで知り合ったんですか?」と訊ねられる。いや、最初は取材させてもらって、それがご縁で――と話していると、「橋本さんは、すごいしっかり観てくれるから。今はマームとジプシーって劇団に密着してて、その人らのことをすごい観てて、それを文字にしてる」とMさんが説明する。「まじっすか。俺らもいつか、橋本さんに観てもらえるようにならないと」と別の人が言うと、「でも」とMさんが言葉を添える。「橋本さん、めっちゃ厳しいで」と。「え、辛口なこと言われちゃうんですか」「辛口なことは言ったりせえへんけど、すごい丁寧な言い方で言ってくれるから、どれぐらい響いてるんかどうかは別に辛口なことを言ってなくても伝わってくる」。僕は、そんなふうに思ってもらえてると思っていなかったから恐縮しきりだった。

 2時過ぎに二次会はお開きとなった。さて、タクシーで帰るかと思っていたら、三次会にまで誘っていただく。僕以外には、Mさんと同業者2人しかいなかったのだ。本当についていっていいのだろうかと迷いつつも、タクシーに同乗させてもらって、前にも連れてきてもらったバーに入った。外が明るくなるまでずっと、皆でウォッカソーダを飲んでいた。Mさんはもう、先のことを見据えているようだった。これからが楽しみだし、僕も負けずに頑張らなければと思う。店を出て歩いているとき、Mさんはじっとケータイを見つめていた。「ほんまに受賞したんやなあ」と、つぶやくように何度も言っていた。