朝5時に目を覚ますと、喉がイガイガする。やはり風邪を引いてしまったようだ。最近は手洗いうがいも徹底しているし、外に出るときはたいていマスクをつけているし、不規則な生活を送っているわけでもない。風邪を引いた原因は何だろうかと考えると、急に休肝日を設け始めたということしか思い浮かばない。ここ数ヶ月、連日アルコールの分解に追われていた身体にようやく休日が与えられ、ほっと休んでいたところにウィルスが侵入したのではないか――と、少し本気で考えている。

 ヨーグルトを食べて、ベンザブロックを飲んで寝る。「代わりに寝ててあげるから、会社に行ってきて」と知人が言う。「僕のぶんまで稼いできて」と知人を見送る。布団に横になって、ずっと読書。元気を出さなければと、お昼ごはんは近くのスーパーでソースカツ丼を買ってきて、それにボンカレーをかけて食す。

 風邪と言っても症状は軽く、どこかに出かけたくなってくる。しかし、毎日酒を飲むのを止めるとなると、出かける場所が急に浮かばなくなる。それに、最近はふらりと誰かに会うということがなくなってしまった。横になったまま一日を終えるのも寂しく、日が暮れる頃になって新宿に出た。新宿に出れば誰かと偶然会ったりするかもしれない。紀伊國屋書店に入り、『文藝』に掲載された植本一子「思い出せないことたち」を立ち読みし(立ち読みでごめんなさい)、『文學界』と『EYESCREAM』、それに単行本を2冊ほど購入する。

 「らんぶる」に入り、買ったばかりの雑誌をぱらぱらめくる。『文學界』の次号予告には特集「寺山修司VS藤田貴大」とあり、「さらに穂村弘又吉直樹がゲスト出演したこの演劇が出来上がるまでの長編ルポなど」と印刷されている。ほんとうに、自分でも気持ち悪いほどうきうきする。早く一ヶ月経たないか。雑誌をひとしきりめくると、福田和也『日本人の目玉』(ちくま学芸文庫)読み始める。コーヒー1杯で2時間粘り、ようやく一篇読み終える。今週号の『SPA!』で福田さんが語っている「いい文章を書こうと思ったら、まずは自分がどういう人間かってことを認識しないと書けませんよ」という言葉を思い出す。自分は何に惹かれ、何を思い、どう過ごしているのか。それを徹底して考えるということが、今の自分には圧倒的に足りていないと思う。私の「目」は何を見ているのか。

 21時、アパートに戻ってキムチ鍋。今日は一人鍋なので、白菜と長ネギ、それに鶏モモ肉だけ。知人の帰りを待つあいだ、フィルムカメラのことを調べていた。フィルムカメラに興味を持つきっかけは、これまでいくらでもあったはずなのに、一度も興味を持たずにきた。この15年で、それこそ15台くらいデジカメを買っている気がするけれど、フィルムには興味を持たなかった。それが、去年の12月に繰り返し舞台を観ているうちに、フィルムカメラが欲しくなった。実家から持ち帰ったフィルムカメラでぽつぽつ撮っているが、まだ現像に出せていない。どんな光景が写っているのか楽しみだ。