朝8時に起きて、トーストを食す。曇っているわけではないが霞んでいて、春みたいな空だ。さて、今日は何をして過ごそうか――ぼんやりツイッターを眺めていると、銀座の「Y」が再オープンしたという情報を見かける。ツイッターにお店のアカウントが開設されていて、「2/12(金) 6丁目に新たにオープンいたします 宜しくお願いいたします」とつぶやいている。はたして本当にオープンしたのか確かめるべく、夕方から銀座に出かけてみることにする。

 ネットの情報では「7丁目から6丁目に移転しました」としか書かれていなかったので、銀座6丁目にあたるブロックをコリドー街から新橋演舞場までしらみつぶしに歩く。外堀通りは大勢の中国人観光客――どういうわけか大きなスーツケースを引いて歩いている――で溢れていて、一歩入るとドカタのお兄さんたちが歩いている。このあたりは建て替え工事が多いせいだろう。演舞場の近くまで行ってみても見つけられず、まさかガセだったか(だとしたら渋過ぎるガセだ)と思ってもう一度ツイッターを確認すると、いつのまにか住所が追加されていた。

 グーグルマップを頼りに引き返すと、ビルの入り口に花が届いているのが見えた。このビルの2階に、新しい「Y」が入っていた。店はすっかり新しくなっているが、見覚えのある女性が常連客とおぼしき人と話し込んでいる。とりあえず熱燗を注文すると、昔と変わらぬお調子が運ばれてくる。葱ぬたと玉子焼きをツマミに飲んでいると、少し離れた席に座った老齢の男女が店員を呼びつけ、何やらクレームをつけている。店員さんはすぐに厨房に移動してツマミを絞り、店内の照明を暗くした。

 「こんな明るいんじゃ喫茶店だよ」と男。「色々見てるからさ、私達はわかるのよ」と着物の女。「テーブルだって、こんな小さいんじゃ鍋なんか置けないよ」と男は言うが、テーブルと椅子は移転前と同じものだ。聞いているこっちが恥ずかしくなる。ああいう年寄りにはなりたくないなと思う。店のお母さんが話し込んでいる別の女性客は、「ああ、久しぶりに食べられて嬉しかった」と綺麗に帰って行った。

クイクイ飲んで4本目のお銚子をつけてもらったところで、お店のお母さん――リニューアルとともに子供の夫婦に代を譲ったという――が「これ、嫌いじゃなかったら食べて」とまぐろの山かけをサービスしてくれた。オープン初日ということもあって、次々お客さんがやってくる。満席になる前にと牡蠣南蛮を注文する。以前は冬季に「牡蠣そば」というメニューを出していたが、新しい店舗では「牡蠣南蛮」になったようだ。相変わらず牡蠣は大きくぷりぷりで美味しかった。

 それにしても、「Y」が復活するとは――。これはまずこの方に知らせておかなければと、Tさんにケータイで知らせる。「あとで新宿5丁目『N』で会おう」と言ってもらって電話を切り、新宿へ。「N」がオープンするまでまだ少し時間があるので、「らんぶる」でブレンドを飲んでクールダウン。タワレコで北村早樹子インストアライブをやや遠巻きに聴いたのち、「N」へ。Tさんに誘ってもらってボックス席に加えてもらう。隣にいた綺麗な女性は広告関係の仕事らしく、「出版関係の方って上品なんですね」と言われる。僕は口数が少ないだけなので、「上品」というのはあえて言われているのかもしれないなとも思うが、そんなことより自分が「出版関係」と名乗っていいのかどうかわからず、ただ戸惑う。