10時過ぎに起きる。今から朝ごはんを食べるのも遅いので、「コットンクラブ」の開店を待ってブランチに出かけることにする。ということで11時半、知人と一緒に「コットンクラブ」。今日のランチプレートはポークソテーだ。ごはんはお代わり自由だが、糖質が気になるので「ライスは半分にしてください」と注文する。それでも途中でお腹一杯になってしまった。

 この1週間は炭水化物を摂ってないから、胃が小さくなったのか――そう漏らすと、「たかだか1週間ぐらいでそんなこと言う」と知人は白い目で僕を見る。でも、以前はあっという間に平らげていたのに、今日は食べきるまでに知人より時間がかかった。でも、たかだか1週間ではあるけれど、たとえば1週間食事をしなかったあとに普通の食事をすると身体を壊してしまうわけだから、変化が生じ始めるには十分な時間だという気もする。

 夕方、原宿へ。竹下通りを歩いてゆくと、出口のあたりに庇が建設されている。ごく短距離のあいだで、灰色のコートを羽織った人と6度すれ違う。明治通りを超えて、原宿「VACANT」ヘ。話には聞いていたが、古着を扱うようになって1階の雰囲気が変わっている。今日は18時から、goatの日野浩志郎による新プロジェクト 「Hino Koshiro plays prototype Virginal Variations」の東京初公演が行われる。別のライブのチケットを買ってしまっていたのだが、goatは好きでよく聴いているので、この公演があると聞きつけてやってきたのだ。

 ライブの印象を、どう書き記せばいいのだろう。一体何だろうこれはというのが、公演中の率直な感想だ。サックス、シンセサイザー、ドラムス、チェロ、ギター、20名弱による大編成だが、しばらくは「ボエーーン」と不思議な音が一定間隔で繰り返されてゆく。それが20分ほど続くと、その音にリズムが加わる。

 リズムが刻まれ始めると、聴いている僕も音にノレる――が、リズムにノるという向き合い方でいいのだろうか? そうだとすれば、あれだけ続いた「ボエーーン」の時間は一体何だったのか? 僕にはこの1時間強の演奏がどんな思想に貫かれているものなのか、まったくわからなかった。わからないから駄目だと言いたいわけではなく、わからないから気になる。僕が今持っている言葉では噛み砕けないからこそ、誰かの批評を読みたいし、インタビュー記事を読みたいという気持ちになる。

 終演後、知人と一緒に「ゆかり」という居酒屋に出かけ、あじのたたき、タコのから揚げ、ニラ玉などをツマミにライブの感想を話す。珍しく知人も同意見のようである。この「ゆかり」という店は、知人が言うのは「原宿で打ち上げと言ったらココ」というお店であるらしく――僕は原宿で打ち上げと言えば「あしどり」だが――、隣の席に座るお客さんもどこか見覚えがある。その声にも聞き覚えがある。この声のテープ起こしをしたことがある気がする

 しばらく記憶をたどって、それがcのドラマーの方であることに気づく。1年前、cのHIさんにインタビューした際、偶然――でもないか、同じ特集内でインタビューを受けたドラマーのDさんがまだお店に残っていて、その流れで一緒にインタビューに答えてくれたのだ。「取材の際はお世話になりました」と話しかけようかとも思ったが、それも図々しい気がして、結局声はかけなかった。むしろ「Dさんに気づいたファン」であると認識されて負担をかけないよう、過剰に素知らぬふりをして酒を飲んだ。