半袖半ズボンでホテルを出てしまって、すぐに気づく。沖縄の人は半ズボンを履いていないし、半袖の人も少数派だ。つまり僕はいかにも観光客らしい格好になってしまっているが、連休明けの今日は観光客の姿も減り、浮いてしまっている。今日は『S!』誌の構成をせねばならないのだが、せめてうまいものを食って仕事をしようと国際通りの「ステーキハウス88」に入る。

 沖縄にくると頭が破裂しそうになる。僕が最初に沖縄を訪れたのは小学生の頃だ。二、三度訪れたことがあるらしく、実家にあるアルバムをめくると、まだ可愛げのある顔をした自分が沖縄に立っている。那覇でステーキを食べるたび、「小さい頃に食べた時、あまりのうまさにステーキに夢中になって阪神の帽子を忘れたんだ」と思い出す。それはエピソードとして記憶に残っているだけで、あのとき沖縄の海を見て何を思ったのか、ステーキを食ってどう感じたのか、どうして「基地が見たい」と言い出して嘉手納基地に連れて行ってもらったのか、まるで覚えていないのだ。

 一つだけ覚えているのは、ひめゆりの塔を見学している時にただただ苦しい気持ちになったこと。広島に生まれ育ったせいか、戦争に関する資料館を見学することがトラウマのようになっていたのだろう。だから大学生になっても「沖縄に旅行に出かけよう」という気持ちには中々なれず、自分でチケットを手配して沖縄を訪れたのは大学4年になってからだ。あのときもZAZEN BOYSのライブが目的だった。

 その次は2013年6月、マームの皆に同行する形で訪れている(そのときのことは『沖縄観劇日記』に書いた)。2013年秋、「お礼参りの旅」としてまた皆で訪問し、クラムボンのライブを観る。2014年4月、「まえのひ」という作品のツアーに同行。2014年6月、慰霊祭に合わせて再訪(これを『沖縄再訪日記』に書いている)、2015年春、「まえのひ」ツアーで出かけた場所を一人で再訪する中で沖縄にも訪れる。一度東京に戻り、その数日後に「cocoon no koe cocoon no oto」という作品に同行する形で沖縄を訪れる。2015年夏、「cocoon」という作品に同行。そして今、また沖縄にいる。この3年で7回も沖縄を訪れているということになる。それ以外にもいろんな記憶が混ざり合っていて、記憶で頭が破裂しそうになる。

 あのステーキを食べたのはいつだったのか。精進料理を出す食堂に皆で出かけたのはいつだったのか。その店の弁当をもらって食べたのはいつだったのか。海が見渡せる食堂に出かけたのはいつだったのか。前にこのスタバで仕事をしたのはいつだったのか。島でぜんざい(かき氷)を食べたのはいつだったのか。ドライブインに立ち寄りルートビアを飲んだのはいつだったのか。最初にタコライスを食べたのはいつだったのか。水族館の近くでソーキそばを食べたのはいつだったのか。この焼きてびちを食べるのは、今日で何回目だろうか?