朝起きると、知人が僕の髭を引っ張っている。「髭と遊べなくなる」と知人が言う。今日は固めの仕事があるので3週間ぶりに髭を剃ることになっているのだ。昼過ぎ、髭を剃って仕事に出かけようとしたところで「延期になりました」とメールが届く。

 夜は神保町SOBOで東葛スポーツ『金町◯屋書店』観る。金町にある、スタバの併設された◯屋書店が今回の舞台だ。閉店後の店内で店員同士が語り合ううちに、ある店員が“嫌韓”であることがわかってくる。そこから差別的な言動が噴出する。今回の舞台でサンプリングされている映画の一つはタランティーノの『ヘイトフル・エイト』だ。南北戦争から数年後のワイオミング州を舞台とするこの映画には、北軍の騎兵隊で今は賞金稼ぎを行う黒人の男、大勢の黒人を虐殺した南軍の将軍、黒人殺しの略奪団でありながら新任保安官となった男、生きたまま賞金首を捕まえてその処刑を見届けることから「ハングマン」と呼ばれる賞金稼ぎ――様々な立場の人間が登場する。

 前作の『ジャンゴ』も面白かったが、それが「差別されていた黒人がその復讐を果たす」というカタルシスがあったのに比べて、『ヘイトフル・エイト』にはその種のカタルシスは存在せず、正義と呼べるものも存在しない。「その正義のなさが素晴らしい」――映画を観終わった僕はそんな感想を抱いたのだが、『金町◯屋書店』における『ヘイトフル・エイト』のサンプリングを観ていると、自分の感想を恥じる。今の日本では、『ヘイトフル・エイト』の世界を過去のことだと切り離すことができないだろう。では、どうするのか。

 タイトルにもあるように、今回はカルチュア・コンビニエンス・クラブをいじる作品でもある。劇中、Tカードを所有する人は実に3800万人にも及ぶことをペッパー君が紹介する。Tポイントに参加している企業は81社を数え、様々な店で私たちはTポイントを貯めることができる。それは、言い換えればそれほど広範な消費行動をCCCに把握されているということでもあり、私たちはCCCの帝国の中で生きていると言える。その帝国から逃れる方法はあるのだろうか。そんなことを考えながら、観劇中に缶ビールを3本飲んだ。