昼、新宿に出て、物販に追加で納品を済ませる。『てんとてん』の公演中は開演前にも物販をやってくれているので、売れ行きを見守る。閑散としているよりも他にも客がいたほうが賑わうだろうと思って、サクラのように振る舞う。「橋本さん、中で観ます?」と言ってもらったけれど、予約が完売している公演でもあり、公演中もロビーで過ごし続けた。舞台上に設置されているマイクで拾われた音がロビーにも流れているので、音は聴こえてくる。その音に耳を澄ませていた。

 終演後、ルミネで服を物色する。バンドカラーシャツで良さげなものを見つける。試着してみると「サイズ感がぴったり」だと店員さんが言うので、すぐに購入する。ホクホクした気持ちで「浪漫房」に入り、生ビールとかつおのたたきを注文する。時刻は18時、まだ店内はがらんとしている。2杯ほど飲んだところで店を出て、NEWoManに引き返す。1時間前、NEWoManの前にはケバブ屋のトラックが停まっていて、「ここで販売しないように」と注意を受けていたけれど、しれっと営業を続けている。その図太さが頼もしく思えてくる。

 19時半、『てんとてん』の夜公演が始まる。僕はまたロビーで音を聴いて過ごす。僕は1階にある「DEAN & DELUCA」で白ワインとコップを買ってきて飲んでいた。

 開演後ほどなくして、小さな男の子が姿をあわらす。ハーフとおぼしきその少年はロビーを駆け回り、H.KさんやK.Yさんに少し遊んでもらっている。ひとしきり走り回った少年が「なんだここ、ヘンな場所、ヘンなばばあ!」と叫ぶと、K.Yさんがハッと目を丸くする。まだ24歳である彼女が「ばばあ」だなんて呼ばれたのは初めてだろうなと、横から眺めていておかしくなる。

 終演時間が近づいた頃になると、母親とおぼしき女性がエスカレーターで降りてくる。今、劇場の中で上演されている作品には、熊本のスーパーでトイレに出かけた3歳の女の子が殺害され、リュックに詰めて運び出された事件を思わせる話が登場する。母親はこどもの方に一瞥もくれずに歩き去り、男の子は母親のもとに駆け寄っていく。終演後は思い出横丁「T」に移動し、ホッピーを1セットだけ飲んだ。