朝8時に起きる。今日は時間がないのでジョギングには出ず、『S!』誌の構成に取り掛かる。ひたすら仕事を進める。昼は麻婆豆腐丼を食べた。16時に完成し、メールで送信。これでライブに間に合うとホッとする。都営大江戸線で六本木に出て、東京ミッドタウンでやや迷子になりながらも、17時25分にbillboard live Tokyoにたどり着く。今日は19時からZAZEN BOYSのライブがある。開演までしばらくあるが、予約完了時のメールに「17時30分までに受付をお済ませください」と書かれていたので早めにやってきたのだ。

 僕の整理番号は6番だった。17時30分になると、番号順に中に案内されてゆく。ZAZEN BOYSは以前にもこの会場でライブをやっているけれど、その日は都合がつかず、billboard live Tokyoに来るのは今日が初めてだ。チケット代が他の公演に比べると高かったのだが、中に入るとすぐに理由がわかった。ジャズクラブのようなハコだ。こういう場所に縁がなかったので緊張しつつ、店員に希望の席を伝えて席につく。テーブルに置かれたメニューを開き、アサヒスーパードライを注文する。ビールは1000円と高めの設定だが、開き直って豪快に飲んだ。

 少しずつ客席が埋まってゆく。比較的年齢層は高めだ。ビールを2杯飲み終えると、4種のソーセージ盛り合わせと一番安い赤ワインをボトルで注文する。ステージの後ろはガラス張りになっていて、六本木の夜景が見えている。店員さんはぎこちないけど丁寧に接客している。ほろ酔い加減で夜景を眺めていると、上の階から歓声が上がる。時計を見ると19時ちょうどで、通路を抜けてメンバーが登場するところだ。客席のあいだを抜けてステージに上がり、1曲目の「Sugar man」が始まる。最近この曲のことを――「47都道府県のしがらみあいが囁かれはじめた分断の時代」という歌詞のことを――思い出す機会が増えた。

 2曲目の「RIFF MAN」を聴いていると、ふいに思い出す。アメリカの東海岸ツアーを追いかけたとき、フィラデルフィアのパブでライブを観たときのこと。台湾のフェスティバルに呼ばれたときに記録係をすることになって、演奏するメンバーと盛り上がる観客の様子を撮影したこと。昨日のAさんの言葉も思い浮かんでくる。僕の身体にはZAZEN BOYSサウンドが刻み込まれてしまっている。もし僕がぼけてしまったとき、彼らの音楽を流すとどんな反応をするだろう。

 開演して45分が経とうとしたところで、赤ワインは飲み干してしまった。「破裂音の朝」の演奏が始まる。この曲が演奏されているということは、ライブはもう終盤だろう。飲み物はもう追加しないでおこうと思っていると、ドラムの松下敦がカウントを取り、「冷・凍・都市・から」と口にする。その瞬間に僕は店員を呼んで、「一番安いジャック・ダニエルをロックでください」と注文する。ジャック・ダニエルは「自問自答」を聴いているあいだに飲み干してしまった。最後に「KIMOCHI」が演奏されると、ライブは終演となる。僕はこのあと続けて行われる2nd stageのチケットも購入しているけれど、こうして酔っ払った状態ではどこまで楽しめるかわからなくて、結局2nd stageは観ずに帰ることにした。最後の一杯が駄目押しになったのか、ハッと気がつくと光が丘という見知らぬ駅にいた。