8時に起きて、今日もそばを食す。今日は原稿料が振り込まれる日だ。昼前になり、インターネットから預金残高を確認すると、思ったほど増えていなかった。一体どういうことだろうと取引を確認すると、サシオサエという文字がそこにある。人生で二度目だ。住民税の支払期限が過ぎてしまっていたのだろう。一気に暗い気持ちになる。

 こうしてみると、フランスとスペインに出かけたのは無謀だった。今月末には旅先のカード払と飛行機代を支払わなければならず、それがかなり財布を圧迫している。でも、あれをやっておかなければ、2年後に良い原稿は書けないだろう。移動するということは金のかかることであり、考える前にまず移動してしまっているけれど、後になって重くのしかかってくる。

 金策を練り直す。が、どうやっても数字の辻褄が合う気がしない。暗い気持ちで麻婆豆腐丼を作って食べる。17時45分、地下鉄を乗り継ぎ銀座に出る。数寄屋橋交差点の出口を出て、銀座の夜景を目の当たりにすると、少し気持ちが軽くなったような心地がした。18時、『S!』誌の対談収録が始まる。

 20時過ぎに終わり、全員でコリドー街の「R」に流れる。コリドー街はかつて見たことがないほど賑わっている。金曜日とはいえ、ここまで歩きづらかったことがあるだろうか。「R」に着いてハイボールが運ばれてきたところで、「抜けられます」の世界みたいだったねとTさんが言う。僕では「歩きづらかった」としか言えないけれど、それをもっと違う言葉で表現するのが文学者なのだろう。ハイボールを2、3杯飲んだところでお開きとなり、僕はひとり新宿・思い出横丁に流れてホッピーを1セット飲んでから帰途についた。