朝8時に起きる。知人はフジロックに出かけて行く。ハムサンドを食べて新宿へ。昨日も書店で『ちくま』を探していたけれど、昨日の段階では並んでいなかった。紀伊國屋書店(新宿本店)に行ってみると、今日は『ちくま』が並んでいる。それを手に取り、ベルクでビールを飲みながら読んだ。10分で店を出て、埼京線与野本町へ。今日観るのは大スタジオで上演される作品だが、まずは小ホールに足を運び、友人に話しかける。無視されても仕方がないなと思いつつ、『ちくま』を手に「読みました」と伝える。「読みました? 沖縄じゃなかったですけどね」と友人が言う。「沖縄じゃなかったけど、読みました」と言って、大ホールに向かった。

 13時30分、ワークショップ公演『ハロースクール、バイバイ』観る。出演するのは埼玉県在住の10代の子たち。2010年にマームとジプシーによって上演され、2012年にはいわき総合高校の子たちと上演された作品である。僕が初めてマームとジプシーを観たのは2011年4月の『あ、ストレンジャー』だ。それ以降に上演された作品たちはほぼ観ているけれど、唯一観ていないのが『ハロースクール、バイバイ』だった。上演が始まる。最初に流れ始めた曲にハッとする。それは1年前に上演された『A-S』で使用されていた曲だ。

 観ているうちに、『cocoon』のことが思い出される。2010年の段階で、マームとジプシーはこの作品を描いていたのか。一体誰がどの配役だったのだろうと考える。舞台となるのは、かもめ中学校のバレーボール部だ。部員の中には、運動神経があまり良くない女の子が登場する。彼女が他の皆と同じように頑張れず、それでしごかれたり、弱音を吐いたりするシーンで笑いが起きる。最近は本当に観客席にいることが耐えられない瞬間がある。どうしてこのシーンを笑えるのだろう。このシーンで笑う人たちは、『cocoon「もう頑張れない」と命を絶った“えっちゃん”の姿を見ても笑うだろうか。過労死のニュースを見ても笑うだろうか。

 制作のH・Kさんから「今日は打ち上げがあります」と誘ってもらっていた。打ち上げに混ざれる自信はなかったけれど、断るのは断るので自己主張になってしまう気がしたので、せめてこの3週間のことを書き留めておいて参加することにした。駅前の喫茶店で、この3週間で使い切ってしまったメモ帳をめくりながら、書く。

 21時半になってようやく書き終えて、「いちごいちえ」に向かった。端の席に座り、皆の様子を眺める。宴が始まって2時間以上経っていることもあり、いつにもまして皆が楽しそうに見える。僕はもう語れる言葉はなくて、ただ皆の姿を眺めて酒を飲んだ。さいたまでの公演が終わり、ここから皆は旅に出る。ここから皆、どんな風景に出会うのだろう。次に会うのがいつになるのかわからないけれど、そのことを想像しながらハイボールを飲み干した。