朝6時に起きる。昨晩は遅くまで月刊ドライブインの原稿を考えていたので、あまり眠れなかった。まだ眠っている知人に「実家で犬と楽しく過ごしてくるんで」と言い残し、アパートを出た。東武東上線で寄居に出て、八高線群馬藤岡。まずは駅前のホテル――一瞬ラブホテルと見間違えたが「ビジネスホテル」と書かれている――に荷物を預ける。駅前には商店街があり、「とんかつ 御食事処」なんて気になる看板もあるけれど、ほとんどシャッター商店街だ。

 商店街にある自転車屋さんで自転車を借りて(事前に電話をかけ、1泊2日でレンタルできないか相談しておいた)、いざドライブインを目指す。10時半には到着して、取材を始める。取材といっても、やってくるお客さんの様子をぼんやり眺めるだけ。昼前にお店のご主人がやってきたので、資生堂パーラーの菓子折を渡してご挨拶。少しだけ話を聞かせてもらって、明日改めてよろしくお願いしますと伝える。アイスコーヒーをご馳走してくれた。

 端っこのテーブルに陣取り、ひたすらドライブインの様子を観察する。部屋に流れる時間の旅ならぬ、店に流れる時間の旅だ。ほとんどダジャレのような発想ではあるけれど、ある場所を言葉にするためには、それくらいの気概が必要だろう。15時過ぎ、自動販売機でチャーシューメン食べる。補充されたばかりのチャーシューメン。チャーシューの塩気にパンチが効いていて、夏に食べるには最高だ。麺を啜っているとお店のお母さんがペットボトルのお茶を差し入れてくださる。18時過ぎになると、店を経営されているご夫婦は帰宅する。帰り際、お母さんはお店で販売しているラベンダーの香りがする枕をプレゼントしてくれる。手土産を渡したとはいえ、ミニチーズケーキが6個入っているだけの菓子折なので申し訳ない気持ちになる。

 店は次第に静かになってゆく。21時、自動販売機でピザトーストを買って食す。虫の鳴き声と自動販売機の唸り声だけが響いている。23時になるとゲームコーナーが閉まる。ゲームコーナーを担当している従業員の男性と少し立ち話をして、昔の話を少し伺う。深夜になっても誰かやってくるのではないかと待ち続けたが、誰も来ないまま日付は変わり、自転車こいでホテルに帰る。小雨が降っていたけれどむしろ心地良かった。ノンアルコールビールを2本飲んで眠りにつく。