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朝7時に起きる。リビングに降りると両親はパンを食べている。少し前に新しいパン屋がオープンして、最近はそこのパンを朝ごはんにしているという。僕は「朝食はいらない」と言っておいたので、お茶だけ飲んで部屋に戻り、線香を焚く。昨日買った線香、使い道がないのでお香として使うことにする。白檀の香りは好きだ。この香りをまとって歩けたらいいのにと調べてみると、白檀の香りがするオーデコロンが出てくる。しかも、いつだかフィレンツェで出かけたサンタ・マリア・ノヴェッラのものである。
明日は雨だというので、今日のうちに洗濯しておく。少し汗をかくと、黒いズボンに白い波が残る。部屋で月刊ドライブインの原稿を考えていると、「明日8月15日、小学校にて、盆踊り大会を開催します」とアナウンスが聴こえてくる。軽トラで宣伝してまわっているようだ。カレンダーとは無縁の仕事をしているのに、わざわざこんな混雑する時期に里帰りしたのは盆踊り大会のためだが、明日の予報は雨である。今日はまだ雨が降っていないのだから、今日のうちに開催してくれればいいのに。恨めしい気持ちで軽トラを眺める。
12時過ぎ、昼食。食卓に置かれていたのは朝のうちに茹でたという素麺である。素麺が嫌いなわけではないけれど、里帰りして一緒に食べる最初の食事が、茹でおきの素麺。付け合わせがあるわけでもなく、ただ素麺である。4啜りほどして、ドライブに出る。蟲文庫で購入したクラムボン『モメントe.p.2』聴く。ここに収められている歌は、ずいぶん身近な場所にいるように感じる。それが悪いと言っているわけでも良いと言っているわけでもなくて、同じ社会状況を前に立っている感じがする。隣町の外れのほうにあるドライブインに行ってみると、「管理物件」という大きな看板が見えてくる。まっさらな更地になっていた。
午後は月刊ドライブインの原稿を書く。素晴らしい原稿でなければ意味はなく、いろいろ考えあぐねる。どうしても7月に観た作品たちが頭をよぎる。自分が素晴らしいと思った作品に、張り合えるというと変だけど、それくらいのものを書きたいと思う。18時過ぎ、なんとか書き終える。もう少し推敲は必要だが、店主に確認してもらえる段階にまでは仕上げることができてホッとする。晩ごはんはすき焼きだった。父は第三のビール、母はお茶、僕はノンアルコールビールで乾杯。控えめに食べるつもりでいたけれど、そんなことを気にしなくてもすぐにお腹が一杯になってしまう。
ところで今日の夕方には嬉しい誘いがあった。「野外上映を観る約束があるので、よかったら橋本さんも来ませんか」と誘われたのだ。里帰り中なので参加することはできなかったけれど、そういう催しに誘ってもらえて嬉しかった。でも、それと同時に、「今ことばを交わすことができるだろうか」という気持ちになる。他の皆はともかく、誘ってくれたY・Sさんと話せることばは今あるだろうかと考えてしまう。我ながら、いつまでそんなふうに考えているつもりなのだろう?