朝8時に起きる。今日のうちに月刊ドライブインの原稿を完成させなければ。朝、喫茶店まで歩いていると電話が鳴る。出ると「ドライブイン七輿」のお母さんからだ。昨日届いた原稿を読ませていただきました、まさか自分たちの人生をこんなふうに書いていただけるなんて、43年間続けてきた甲斐がありましたと言ってくださる。そう言ってくださるからこそ、もっと完璧な原稿に仕上げなければという気持ちになる。駅前のルノアールに入り、クラムボンを聴きながら原稿に赤を入れてゆく。今回はずっとクラムボンを聴きながら書いている。

 そうだ、ここにあの話を書き加えよう。では、どんなふうに書き加えればいいだろう。腕を組んで考え始めても、一向に言葉は浮かんでこなかった。最近つくづく思うが、日本語が不自由だ。あの話とその話とこの話を淀みなくまとめたい。ではどう書けばいいのか。考えてもまったく浮かんでこない。結局、ほとんど書き進められないまま喫茶店を出た。アパートに戻り、セブンイレブンの鶏団子鍋を食べて原稿を考える。なんとかドライブイン七輿の原稿を書き上げて、知人に読んでもらう。9000字近い原稿だがダレずに読んでくれるが、いくつか赤線が引いてある。「なんかこの辺カタカナが多い気がする」とのこと。

 今度はもう一篇、ロードパーク女の浦の原稿に赤を入れてゆく。完成させる頃には日が暮れている。これもまた知人に読んでもらう。「なんか波の音がする。ざざーんて感じ」と知人は言う。今回の原稿はクラムボンを聴きながら書いたというのは、具体的には「波よせて」と「おだやかな暮らし」、それに「便箋歌」だ。原稿の書き出しは海沿いの民宿で、海を眺めながら、曽我部恵一の「浜辺」を繰り返し聴きながら考えた。それは知人に伝えていなかったので、知人がそんな感想を漏らしたことに驚く。結局、夜遅くまで原稿を直し続けていた。