朝6時に起きて、東京駅八重洲南口へ。ドトールでアイスコーヒー(M)を買って、7時20分に房総なのはな号に乗車する。昨日と同じ風景を眺める。高速竹岡で降りて、ドライブインへ。朝9時の開店を待ち、入店。まずは瓶ビール(大瓶)と目玉焼きを注文する。ぼんやりテレビを眺めていると、「好きなチャンネルに変えてくださいね」とリモコンを渡してくれる。店員さんは神棚にお供え物をして手を合わせている。しばらくするともう何人か店員さんがやってきて、少しずつお客さんが増えてくる。サンダル履きの人が多い気がする。創業50年になるドライブインは、いかにも昔ながらという店構えだ。おそらく店員さんも長く働いている方が多いのだろう。ぜひとも取材をさせてもらいたいと思いつつ、瓶ビールを3本飲んだ。

 12時が近づいてくるとほぼ満席になったので、一度店を出る。さて、どこで時間を潰すか。近くには民家が点在しているだけで、特に時間を潰せそうな場所はなかった。それどころか日陰すらなく、ジリジリと焼かれる。昼酒だからか、結構酒がまわっている気がする。電柱の細い影に隠れているうちに意識が遠のき、気づけば30分経っている。自動販売機でミネラルウォーターを買って飲み、ミネラルウォーターを買って飲み、ミネラルウォーターを買って飲んで、ようやく落ち着く。

 海が見える場所まで出かけて、ぼんやり過ごす。何人かの友人からメールが届く。一つはしばらく前に交わした約束のことで、すっかり忘れてしまっていたので動揺する。一つはその友人が里帰りにした時に考えていたことをメールで送ってくれた。その友人には7月中旬にインタビューをして、そこで今話せることは話し尽くしてしまったので、それ以降は同じ場所にいても言葉を交わしてこなかった。酔っ払った頭で、僕なりに思っていることを返信する。もう1通は、K・Yさんからのメールで、何気なく『漱石文明論集』を手にとって読んでいたら、個人主義に関する話があり、それを読んで「橋本さんは、漱石の言うところの個人主義の人なのだと思います」と送ってくれたのだ。

 13時半頃になって店に戻り、アオリイカの刺身と瓶ビールを注文する。1時間少し経ったところでラストオーダーの時間になる。他にお客さんがいなくなったところで、お店の方に月刊ドライブインを手渡す。「また改めてご連絡させていただきますので、お時間のある時にでも目を通しておいていただけませんか」と伝えて、お店をあとにする。高速竹岡のバス停から再びバスに乗り込んで、青空文庫で「私の個人主義」を読んだ。どうして彼女はこれを読んで僕のことを「漱石の言うところの個人主義の人なのだと思います」と言ってくれたのだろう。そういうつもりで僕は生きているけれど、どのポイントでそんなふうに感じたのだろう。ウトウトしながらバスに揺られているうちに、東京駅にたどり着く。