朝8時に起きる。天気が悪く、すぐには布団から出られず。豆腐とワカメの味噌汁を作り、新聞を読む。昼、日暮里駅へ。青春18きっぷの3日目にハンコを押してもらって上野に出て、宇都宮線で北を目指す。小山駅両毛線に乗り換えて、一つ目の思川駅で下車。タクシーを呼んで、15時15分に「ドライブイン扶桑」到着。4月1日に放送された『車あるんですけど…?』で訪れたお店だ。ロケは3月中旬だったので、数週間ぶりの再訪である。

 「どうも、その節は大変お世話になりました」。店主の廣子さんは今日も笑顔で迎えてくれて、コーヒーを出してくれる。メニューにはコーヒーなんてないのに、こうしてサービスで出すために、お店にはきれいなティーカップが用意されている。先日、ロケでお邪魔したときに撮影した写真を含めて、パネルを作って飾ってくれている。聞けば、放送が終わった30分後に次々とお客さんがやってきて、まさかと思って訊ねてみると「テレビを観てきた」と言われたのだという。

 今日はただ記念に再訪したのではなく、『月刊ドライブイン』の取材だ。「ドライブイン扶桑」のことは以前から気になっていたのだが、ロケで訪問して話を聞いてみると、このお店を取材しなければという気持ちにさせられた。番組には収まりきらなかったエピソードも多々あり、あらためてじっくりお話を伺えませんかとお願いしていたのだ。『月刊ドライブイン』はただドライブインを記録するシリーズとして始めたものだが、次第に「昭和のある時代を生きた女性たちの記録」というテーマが僕の中に芽生えてきている。その意味でも、とても印象的な取材となった。家庭の中でも様々な苦労があったであろうことが透けてみえ、話を聞いているうちにハグしたいような気持ちになる。

 1時間半ほどお話を伺ったところで取材を終える。ビールを注文し、最後にタンメンを作っていただく。ロケのときにもいただいたタンメンだ。お店の外に「おいしいおいしい野菜たっぷのタンメン」と書かれた手書きの看板があり、それに気づいて「これ、『たっぷり』じゃなくて『たっぷ』になってますね」と指摘したのがオンエアされていた。番組を観てやってきたお客さんもそれを面白がり、タンメンを注文していく人が多いのだという。本当に野菜が大盛りのタンメンだ。僕は猫舌だということもあり、ロケの日にはなかなか麺までたどり着けず、素人の猫舌がチビチビ野菜を食べている姿をプロのカメラマンに撮影され続け、大変申し訳に気持ちになったことが思い出される。タンメンは今日もおいしかった。

 お母さんは冷やっこやゆでたまごを出してくれて、それを食べ終えるとハッピーターンとショートケーキまで出してくださる。さらにお話を聞かせてもらう。タクシーを呼んだところで会計をお願いすると、「おかげさまでまたお客さんにきていただけるようになりましたので、今日は本当に、お代は結構です」とお母さんが言う。いやいや、そんなわけにはいかないですと何度言っても断られてしまう。今度遠出した際にお土産を送ることにして、財布を仕舞い、「またお邪魔します」とお礼を言って店を後にする。18時52分に小山駅から電車に乗り、日暮里にたどり着く頃には21時過ぎていた。知人は帰宅するまであと1時間かかりそうだというので、カラオケ酒場に立ち寄る。お店のお母さんもお客さんも基本的に70歳以上だ。「久しぶりじゃない」というお母さんに、今年に入ってからはずっと取材旅行に出ていたんですと伝えて、瓶ビールをいただく。隣に座るお父さんに「魚は好きか」と聞かれ、大好きですと答えると、「よし、じゃあ来週の木曜日にここにこい!」と言われる。カレンダーに予定を入れつつ1時間だけ飲んでアパートに帰った。