7時過ぎに起きる。今日もジョギングはやめておく。豆腐屋さんに豆腐を買いに出かけ、少しだけ話を伺う。店主のかたは78歳で、高校を卒業してからずっとここで働いていること。お店を始めたのはお父さんで、自分は二代目であること。もともと浅草で豆腐屋をやっていたのだが、戦争で焼けてしまい、昭和23年に現在の場所に移ってきたこと。その豆腐で味噌汁を作り、朝食。午前中はテープ起こしを進める。昼、知人と一緒にアパートを出て、千駄木駅近くの中華料理店「砺波」。瓶ビールと餃子とポークライス。チキンではなく、ポークである。店を出たあと、駅前の店で大判焼き。ここも古そうな佇まいなのだが、買い食いしながら「いつからされてるんですか」と尋ねてみたところ、「14、5年」と返ってくる。

 知人と別れ、国会議事堂前へ。休日にはあまり訪れたことがなかったけれど、平日に比べると、警察官が警棒などを目立つ位置に持っているように感じる。妙に緊張しつつ、国会図書館。こちらも休日に利用するのは初めてだが、混雑していて空き端末を見つけるのも一苦労だ。『月刊ドライブイン』に向けて、ある町に関する資料を読み漁り、複写。急いで駅に向かい、南北線と中央線を乗り継いで吉祥寺「百年」に出て、『月刊ドライブイン』の精算。最納品書をお渡しして、返本分はそっとリュックにしまいこむ。

 15時50分、総武線荻窪へ。ホームを降りて西口に歩いていると、反対側の車線に東西線直通の電車がやってきて、真っ赤なスカートを履いた人が降りるのが見えた。遠くからでもA・Iさんだとわかる。今日はAさんと一緒に本屋さんに行く約束をしていたのだ。すごい、鮮やかな色ですねと伝えると、今日はセーヌ川ごっこをするから鮮やかな色にしたのだとAさんは言う。どうすればリーズナブルに飲めるかを考えていたときに、パリのセーヌ川沿いでワインを飲んでいる人たちの姿を思い出し、今日はあの人たちを見習ったスタイルで飲もうと話していた。

 青梅街道を歩き、本屋さんへ。買い物をしたのち、ギャラリーを見学。今度の展示について、Aさんから「舞台で使った小道具も展示したらよいのでは」と提案してもらっていたので、どういう物であれば置けるだろうかと思案。1時間ほどで荻窪駅前まで引き返し、まずは「鳥もと」で乾杯。2011年の3月17日か18日、この店で飲み会があったのだが、それはいろんなことのきっかけになった飲み会だ。その会にはAさんも出席していたのだが、細長いお店だったということ以外あまり記憶に残っていないという。そう考えると、あの日のことを僕が鮮明におぼえているのはなぜだろうかと不思議になる。

 しばらく飲んだあと、吉祥寺に移動し、コンビニでワインとツマミを買って井の頭公園へ。明るい時間に開催された花見に参加したことはあるけれど、夜に飲むのは初めてだ。入り口付近は個人的なフェスが開催されていて騒がしそうだったので、少し歩いたところのベンチに座り、乾杯。対岸の建物の灯りが水面に映り、美しく、愉快な気持ちになる。途中で髪型の話になる。髪型というのも演出の対象になっているのかと思っていたが、そうではないと知ったのは最近のことだ。

 そうであればこそ、不思議なことがある。今年の春に上演された作品に向けて、Aさんは「髪を切らなければ」とショートカットに変えたこと。しばらくその髪型でいくつもりだったけれど、もしこの先××を再演することがあれば、あの役は髪が長くないとできない、そうすると今のうちから伸ばさなければとAさんは言う。そこで髪というのは一体どんな役割を担っているのだろう。ワインのボトルが空になったところで公園を引き上げ、飯田橋まで戻り、神楽坂にある適当な酒場で少し飲んでAさんと別れた。タクシーに乗るとまた散財することになるので、歩いてアパートを目指したのだが、15分ほど歩いたところで真逆に歩いていたことに気づく。