朝8時に起きて、食パンを焼いて食す。誤字脱字がないかもう一度だけ確認して、面付したデータを作成し、11時には『月刊ドライブイン』(11)の入稿を終えた。残すはあと1号だけだ。お昼にキャベツと酒盗のパスタを食べたのち、六本木に出かける。最近、午前中はラジオを聴いて過ごすことが増えた。大抵の場合はJ-WAVEを聴いているのだが、そこで「今日は六本木ヒルズアリーナでceroのフリーライブがある」と宣伝していたので、聴きにきたのである。14時に会場にたどり着く。結構な人出だが、規制がかかるほどではなく、会場の隅で販売されていたハワイのビッグウェーブ・ゴールデンエールという瓶ビールを2本購入し、ライブを堪能する。後ろのほうで観ていたせいもあるが、ライブ中ずっと話しているグループの多いこと。最初のうちはムッとしたり、最近は音楽も個人的に聴くんじゃなくて共有して共感して消費する時代になったのだなと考えたりしていたのだが、無料であるとはいえ、ライブ中に話して過ごすほどライトな層にまで足を運ばせているというのはすごいことだ。かく言う僕もライトな層である。そういう層にまで何か行動させるというのは大変なことだろう。自分の仕事に置き換えると何に当たるだろう。新譜に収録されている「レテの子」という曲が印象に残る。

 さて、どうするか。誰かひとりくらい知り合いに会うのではないかと思って、ライブが終わってみてもしばらく立ち尽くしていたのだが、誰にも会わなかった。いつもそんなことに期待してしまうのはなぜだろう。しばらく考えて、日比谷公園でぼんやり過ごすことにする。日比谷線霞ヶ関に出て、日比谷公園に入ってみると露店がいくつも並んでいる。少し前に『メトロミニッツ』でビヤテラス日比谷が開催されるという記事を読んで気になっていたのだが、まさに昨日から始まったらしかった。早い時間から飲み始めると最近はすぐに眠くなってしまうので、ベンチに腰かけ、書かなければならない原稿のことを考えて、ノートにメモ書きする。すぐ近くにはテーブルと椅子を広げたおじさんグループがいる。これからは外で飲んで過ごそうと考えていることもあり、ああ、あそこまで大きいサイズのテーブルは要らないし、椅子もベンチで十分だけれども、ミニテーブルがあれば楽しそうだなと想像する。

 2時間ほど経ち、夕暮れ時を迎えたところで知人がやってくる。どこのビールにしようかと迷って、「創業1040年」「世界最古の醸造所」と看板を掲げたヴァイエン・ステファンの白ビールを飲んだ。500ミリで1500円、さらにグラスのデポジット代が1000円かかると知り、頭がぐらりとする。ベンチに戻って知人と乾杯。高田馬場に住んでいた頃は、野音でライブを観るときくらいしか日比谷公園に来ることはなかったけれど、今日みたいに原稿を考えて過ごし、夕暮れ時になったところで売店で缶ビールを買ってきて過ごすというのは楽しそうだ。これまで東京を離れたときには「あの風景を眺めながら飲みたい」と考えて過ごして来たけれど、東京でそれを考えたことがなかった。せっかくこの風景があるのだから、それを肴に飲んで過ごしたい。調べてみると、自宅から日比谷公園まで20分もあればたどり着けるのだ。じっくり時間をかけてビールを飲み干して、日比谷線に乗って引き返す。一つ手前の根津で降りて、バー「H」でハイボール。今日はキュウリとコンビーフのサンドもいただく。先日、Tさんの還暦を祝う会でお会いしたときに、パンの話になった。Hさんがよく行くお店を訊ねたとき、そのうちの1軒はパン屋さんだった。僕がよく利用するパン屋さんの名前も出たのだが、「あそこのパンも美味しいんですけど、サンドイッチにするなら××のパンが美味しいんです」とHさんは言っていた。そう言われて、パンのことを気にかけて食べてみると、たしかにサクッとした食感があって軽やかだ。