朝7時に目がさめる。終戦の日だ。昨日あたりから、鹿児島の「ドライブイン薩摩隼人」で聞かせてもらった話を反芻している。11時過ぎ、谷中銀座「E」ヘ。次号の『不忍界隈』に向けて、この一ヶ月何度となく足を運んできたけれど、まだ写真を撮影できていなかった。というのも、この店は午後にもなればお客さんがぽつりぽつりと訪れ始めて、撮影しづらくなるのである。そこで今日は午前中にやってきたのだが、午前中は酒屋としての通常業務で忙しそうで、ご挨拶だけして通り過ぎる。

 テイクアウト専門のチェーンのお寿司屋さんでお昼ごはんを買って帰り、戦没者追悼式の中継を眺めながらお昼ごはんを食す。来年からは違う人がここにいる。その姿がどんな印象になるのか、まだ想像もつかないでいる。14時過ぎ、再び「E」に足を運んでみるも、日陰の席はほとんど埋まっている。写真撮影はあきらめて、生ビールを飲みつつ、追加で聞いておきたかったことをお母さんに聞く。そうこうしているうちにビールを4杯飲んで、ほろ酔い加減でアパートに引き返す。

 酔いをさましているうちに日が暮れていた。千代田線に乗って乃木坂に出て、六本木を歩く。まったく歩きなれない街だが、つい最近『TIMELESS』を読んだせいか、不思議な感じがする。「とん豚デジ」(六本木店)で知人と待ち合わせる。まだ何日も引き継ぎで通わなければならないものの、今日で退職する知人の慰労会を、ふたりで開催。サムギョプサルが食べたいというので、店も自分で選んでもらった。知人はとても嬉しそうに、豚肉を葉っぱで巻いて頬張り、ビールで流し込んでゆく。葉っぱで巻くときに、その都度いろんなものをトッピングしている。僕にはその「いろんなものをトッピングする」という作業がわからず、わからず、というか「自分はこの味を食べたいのだ」と選択するのが億劫で、ついタレにつけて葉っぱで巻かずに食べてしまう。この日は知人が頼みたいというものはすべて注文し、キムチの盛り合わせ、激辛チヂミ、〆にサムゲタンを注文する。最後のサムゲタンだけ僕のリクエストで、前野健太の曲に「マシッソヨ、サムゲタン」という(のかどうか、アルバムなどに収録されていない曲なので正確なタイトルは不明だが、とにかくそういう)曲があり、今年の春に渋谷で行われたライブで白眉ともいうべき曲がまさに「マシッソヨ、サムゲタン」だったことを思い出し、「サムゲタンってどんな味なんだろう?」と注文したのだ。僕はほとんどのものの味を知らないし、食べてもあまりおぼえていない。このサムゲタンの味もやがて忘れるだろうけれど、とにかく美味しかったことは記憶にある。

 腹一杯になるまで食べてしまったので、知人と夜の六本木・麻布・赤坂を散策する。夜の街を歩くのは楽しく、一緒に歩いている知人もまたどこか愉快そうだったのが嬉しかった。