6時過ぎに起きる。7時過ぎ、第一牧志公設市場へ。いち早く仕事をされている果物店のお父さんにご挨拶。前にも少しお話を聞かせてもらっているのだが、もう僕のことをおぼえてないだろう。どうやって話しかけようかと迷って、まずは600円のシークヮーサージュース(濃縮)を購入する。買い物しなければ会話もできない私。これ、泡盛に入れるとおいしいですかねなんて雑談したのち、今度お話を聞かせていただけないかとお願いする。何度か「孫のほうがいいんじゃないの?」とおっしゃっていたが、いや、ぜひお父さんにとお願いした。公設市場の中に入り、以前ちらりと話を聞かせてもらった山羊肉のお店のお母さんに追加でお話を聞く。小さい頃の話を伺っていると、お母さんはそっとハンカチを取り出す。

 昼、食堂「ミルク」でちゃんぽんを食す。沖縄のちゃんぽんは、ごはんの上に野菜炒めがのっけてある。テレビで沖縄県知事選挙の様子が報じられる。それを眺めていた三人組のお客さんが、「こっちは基地の話しかしないし、年寄りしか(応援に)ついてない」と語っている。沖縄入りするまでは、さすがに後継者に指名された候補が優勢だろうと感じていたけれど、一体どうなるだろう。もう一方の候補のほうがフレッシュなイメージを打ち出せている感じがする。

 市場に戻り、ぶらつく。あまり徘徊しているとまた不審者として認識されてしまうので、「掲示板を熟読している人」として佇む。掲示板には、プロのカメラマンを招いて、今のマチグヮーの風景を残してもらうプロジェクトが9月20日から3日間開催されるという貼り紙がある。この町に暮らす人たちが依頼して、そういうプロジェクトが展開されるのであれば、僕が何をやれるだろう。そして、「一口千円から支援を受け付けてます」とあり、身銭を切り続けている身として、心がぎゅうっとなる。だが、身銭を切って、こうして4ヶ月連続で市場に滞在して、日々の風景を眺めている自分だからこそできる仕事があるはずだと心を持ち直す。

 16時、「道頓堀」で取材。こちらは事前に手紙をお送りしていた。ホテルに戻ってシャワーを浴びて、18時過ぎ、市場近くの居酒屋「信」へ。お久しぶりですとご挨拶して、生ビールをいただく。こっちはまだまだ暑いでしょう、沖縄は旧暦だからね、旧暦だとまだ8月だから、もうしばらくは暑いよとお父さんが言う。ローカルニュースでは安室さんの最後の二日間に関連した特集が放送されている。3杯ほど飲んだところで店を出て、牧志公設市場の二階へ。20時、「コーヒースタンド小嶺」の方にお話を伺う。移転に向けた会議を抜けてまで時間をとっていただいて、感謝するほかない。

 21時過ぎ、安里まで歩く。おでんの「東大」、今日は二番目だ。開店を待っていると、僕の前に並んでいた人の元に、遅れて数人やってくる。そのなかに宇田さんの姿もあったが、何かの集まりなのだろうから、急に馴れ馴れしく声をかけても迷惑だろうと、俯いたまま音楽を聴き続ける。しばらくして宇田さんもこちらに気づき、周りの方に「知り合いでした」と話しているのが聴こえたので、会釈だけする。ほどなくしてお店が開く。「最初から島酒にする?」と聞かれたので、残波(白)をボトルで注文。ミミガー&まめ刺しをツマミに泡盛を飲んで、おでんの盛り合わせを食す。23時過ぎには宿にたどり着く。