5月6日

 7時過ぎに起きる。コーヒーを淹れて、セブンイレブンのふんわりベーコンマヨロールを食べながら朝刊を読んだ。前川喜平・元文部科学事務次官の講演会で司会をした女性市議や、改憲反対デモに参加した障害者施設職員の元に注文したおぼえのない品物が通販で送りつけられたという記事が出ている。品物が「ブラジャー16枚がぎっしり」「美容ドリンク、青汁、まな板など」「保湿クリームや化粧水」とあり、普段ぼんやり過ごしているせいか「なぜ?」「もっと送られて恐ろしいものはあるだろう」と思ってしまったけれど、「女は政治のことに口を出さずに、美容や健康のことでも気にしてろ」ということなのかと少し経って気づく。そんな思考回路の人がいるなんて!と言っていても始まらないけれど、どうすればその溝が埋まるのだろう。

 午前中は再校のゲラにもう一度目を通す。昼、豆腐納豆オクラそばを平らげて、14時半に高田馬場に出る。駅前にある喫茶「ロマン」で待ち合わせ、『市場界隈』の打ち合わせ。諸々確認したのち、再校のゲラを戻す。16時、予約してあった美容院に入ると、いつも切ってくれているDさんが「橋本さん、観ましたよ」と言う。僕は自分の仕事が何であるかも言わず、出演することも言っていなかったのだけれども、『マツコの知らない世界』を偶然観てくれたのだという。切ってもらっているあいだ、手渡されたタブレットをいじる。先月利用したときまでは雑誌が置かれていたのだが、雑誌はやめてタブレットにしたのだという。アプリで読める雑誌の中に『Tokyo Graffiti』があり、なんとなく開いてみると、巻頭特集は「等身大ドールの恋人と過ごすおじさんの日々の記録」だ。グラビアと、ドールとおじさんの会話が記されている。数年前ならともかく、今のタイミングでそういうテイの特集を組むのはどうだろう――そう思って読み進めていると、テイではなく、実際にそうやって過ごしているおじさんを2年間追って撮影したのだという。すごい特集だ。前に「余命宣告後の生き方」という特集を組んだと何かで読んで、思い切った編集をしているのだなあと思っていたけれど、驚く。「普通」の幅を広げようとしているのが伝わってくる。

 髪を切ってもらって、早稲田通りを歩く。さっきの『Tokyo Graffiti』を思い返しながら、自分には何が出来るだろうと考える。世界のありようを少し変えるような本を出すには、どんな可能性がありうるだろう。そんなことを考えながら早稲田の青空古本祭をのぞき、今後の企画を練りながら数冊購入する。すごい風で、新書や文庫は飛びそうなほど。缶ビールを買って東西線に乗り、茅場町日比谷線に乗り換え、三ノ輪に出る。待ち合わせ場所のジョイフル三ノ輪を歩いていると、ムトーさんが立っている。場所がわかりやすいようにと、待っていてくれたのだ。そこでセトさん、サキ先輩とも合流して、缶ビールで乾杯。ジョイフル三ノ輪を訪れたのは初めてだが、この商店街で一冊本を作りたくなるほど、気になる風景がいっぱいだ。地図を見ずに歩き、飲んで、店に入り、さらに歩く。セトさんに企画を相談し、オーケーをもらう。「信濃路」にたどり着いたところで皆と別れて帰途につく。