5月11日

 午後、パンダ音楽祭を観るべく、上野の水上音楽堂へ。急に観に行きたくなり、ツイッターで「行けなくなった」とつぶやいていた人と連絡を取って、チケットを手に入れた。クーラーボックスにビールのロング缶を3本、白ワインのボトル、かちわり氷を詰めて、会場入り。比較的前のほう、はじっこの席に一人で座る。急遽チケットを探したのは最近ずっと聴いているカネコアヤノが出演すると知ったことにあるけれど、別にひとりだけを聴くつもりだったわけではなく、最初から最後まで楽しむつもりでいたし、実際に最初から最後まで楽しく過ごし、愉快に酔っ払って帰途につき、バー「H」でハイボールを1杯だけ飲んで眠りについた。何より強く印象に残ったのはカネコアヤノだった。圧倒的な印象だった。セッティングのときに、おもむろにステージにあらわしたのは、ピンク色のワンピースを着た裸足の女性だ。その姿に少し既視感をおぼえる。ワンピースを着て裸足で歌う女性シンガーソングライターというものには、何かもうまとわりついたイメージがある。音源以外を聴くのは初めてなので、勝手に不安をおぼえていると、おもむろにギターをかき鳴らし始めて、「セゾン」という曲を少しぶっきらぼうに歌い始める。照明はついておらず、観客も場内をうろついていて、まだ幕間の時間を過ごしている。一曲まるごと歌い終えると、「大丈夫です」と言って袖にはけていく。まずその姿に圧倒され、その後のライブも圧倒された。音源で聴いている時も、何かに対する納得のいかなさのようなもの、憤りに近い感情をうっすら感じていたのだけれど、ライブではそれが炸裂していた。これはおそらく、ライブ映像でも伝わらないことだろう。ここまで何かに圧倒されるのは本当に久しぶりだ。絶対にこの人のことを取材しなければ。そんなふうに思ったのも久しぶりのことだ。