7月27日

 8時過ぎに起きて、ゆで玉子を作って朝ごはん。古くなったコーヒー豆で、今日もコーヒーを淹れてみる。今日は多めに豆を使って淹れてみたのだけど、豆が膨らまなくて、とても時間がかかる。そのせいかエスプレッソのように苦くなり、お湯で割って飲んだ。キッチンのテーブルで仕事をしながら、ときどきリビングに移動して、「王様のブランチ」の様子を観る。今日は川上未映子さんがブックコーナーに出演すると聞き、最近のブックコーナーは何時頃だっけかとチラチラ観る。11時頃にブックコーナーが始まり、録画しながら観る。昼、パスタを茹でて、市販の明太子ソースを和えて食す。午後はムトーさんとのトークイベントを構成してゆく。

 16時半にアパートを出て、近くのスペシャルな酒屋で日本酒を、それに「腰塚」でコンビーフを買って、田端にあるA.TさんとN.Rさんご夫婦のマンションまで歩く。約束の17時より5分遅れてたどり着く。まずはビールで乾杯していると、Aさんが注文してくれていたドミノピザが届き、ふたりのお子さんであるMちゃんも一緒に食卓につく。準備してくれていたぎゅうぎゅう焼きもほどなくして焼きあがる。Mちゃんはピザに入っているピーマンや、ぎゅうぎゅう焼きに入っているパプリカを嫌がっているけれど、「ちゃんとそれも一緒に食べな」と言われると、素直に食べている。こんな年齢でパプリカを食べているなんて、今時の子だなと思う。僕が初めてパプリカを食べたのはいつだろう。少なくとも上京後だ。

 食事を終えると、Mちゃんはテレビの前に移動して、Amazonプライムビデオで再生してもらった『ちびまる子ちゃん』を観ている。「まる子ノストラダムスの予言を気にする」の巻だ。1999年の7の月に地球が滅亡する――そんな話を、ちょうど20年後の7の月に観ている。それを熱心に観ているMちゃんは、滅亡すると予言された年から15年後に生まれた子だ。彼女には一体、この世界はどう映っているのだろう。「1999年って、俺らは34歳か」と登場人物が言う。つまり彼らは1965年生まれで、70年代にいる。電話は当然黒電話の世界を、スマートフォンが当たり前にある世界にいる彼女はどんなふうに観ているのだろう。しかし、僕だって『ちびまる子ちゃん』は生まれる前の時代で、見知らぬ世界だ。そんな世代が、こうしてアニメを通じて同じノスタルジーを持つことになるのだろうか。

 20時過ぎにおいとまして、山手線と千代田線を乗り継いで帰途につく。ナンバーガールの「最後」のライブ音源を聴きながら歩いているうちに、ああ、再結成一発目の今日のライブを自分は観ることができなかったのだなと実感する。ナンバーガールのことは、リアルタイムではほとんど聴いていなかった。つまり、当時のライブに行くことはできなかったし、そんな世界があることも知らなかったし、知ったときにはもう過去の存在になって、体験することができなくて当たり前だった。でも、今、たった今、新宿でライブが行われていたのだ。でも、抽選にことごとく外れて、それを観ることができなかった。やさぐれた気持ちでアパートにたどり着き、絶対俺が観るべきだったよねというと、観るべきだったと思うよと知人が言う。そして、どうして向井さん本人に「どうしても観たいです」とお願いしなかったのか、それを向井さんから言うわけにもいかないんだから、こっちから言うしかないでしょ、それを向こうも待ってたんじゃないのか。知人の言葉に何も答えられず、誤魔化すように録画したバラエティ番組を観る。