9月8日

 カーテンを全開にしていたこともあり、6時過ぎに目が覚める。台風が近づいているせいか、今日の最高気温は36度と予報が出ている。スーツ姿だと汗だくになりそうだから、ぎりぎりに到着するようにと、ゆっくりチェックアウト。ズボンは礼服、上はT シャツ、足下はビーサンという格好である。敦賀駅が始発だという電車に乗り、発車を待つ。車内はがらがらだ。発車時刻が近づいたところで、向かいのホームに電車が到着し、扉が開くと、乗客がこちらの電車に猛ダッシュで駆け込んできて、あっというまに満席になる。明日は青春18きっぷで帰京するつもりだが、こんな状態だったらどうしようかと暗い気持ちになる。

 11時近くになって目的地に到着し、手配してくださってあるホテルに向かう。トイレでしっかり礼服に着替えて、12時、結婚式に参列。由緒正しき料亭で、緊張する。13時からは披露宴となり、せっかくだからと日本酒を出してもらって堪能する。披露宴が終わると、二次会までしばらく時間があり、ホテルにチェックインして、しばらく休憩しながら酔いをさます。このあと二次会があるけれど、もしかしたら参加者に順次スピーチを求められるかもしれないなと思い、その場合は何を話そうかとぼんやり考える。

 結婚式に招いてくれた新郎とは、二十歳そこそこの頃からの付き合いだ。それから20年近く経って、お互いに本にまつわる仕事をしているというのは不思議な縁だなと思う。

 縁というのは、あらためて、不思議なものだ。新郎は福井出身でもなければ、現在福井に暮らしているわけでもない。ただ、仕事の関係でこの土地に暮らした時期があり、そこで出会った女性と結婚したのである。新郎は東京出身で、現在も東京に暮らしているのに、それでもこの土地で結婚式を挙げるのは、そこが第二の故郷になっているからだろう。

 そのことを考えると、自分が高校時代のことを思い出す。高校2年生のとき、東京から転校してきた同級生がいた。同級生が「東京ってどんなとこなん?」と尋ね、彼が「広島の繁華街は、東京だとひとつの駅って感じかな」と答えているのに耳をそばだてながらも、僕はどこか斜に構えた気持ちでいた。地方都市に暮らしていると、東京からやってきた人間に対して壁を作ってしまうという気持ちはとてもよくわかるし、結婚式を開催するほど打ち解けている新郎のことを尊敬もする。ただ、その一方、そんな新郎に対して、まわりが彼の出身地を愛称としていることが、どうしても引っかかる。本人がそれでよしとしているのに、僕がとやかくいうことではないと思いながらも、最後までそのことが気にかかった。